片桐七海編

第4話

星奈の最後のお願いを叶えると約束はしたが、まず誰から元気にしていけばいいのか。

どう元気にするのかわからず俺は悩む日々が続いた。



星奈と連絡できるということは誰にも話さないと約束した手前、誰にも相談できず悩んでいた。


「ダメだ何も思いつかん。相談できる人もいないしどうしたものか....」



そう独り言を呟き悩んでいると着信が届いた。

スマホを手に取り応答をした。


『もしもし』


『ここ数日ずっと悩んでるな!董哉よ!私が助けてあげよう!』


電話の相手はお願いをした本人である星奈だった。


『なんで俺が悩んでること知ってるんだよ』


『ふふーん私は董哉の全てを見通す事ができるのだ!』



そうだった今の星奈は自分の葬式も第三者目線で見ることができているのだから、俺が悩んでいるのも見ることができるのか。


『それで助けてくれるんだろ?何をしてくれるんだ?』


『最初に元気にして欲しい人を私が選んであげる!そうだなー...うん最初は七海ちゃんを元気にしてあげてほしいの!』


『七海ちゃん...星奈と中学の時から仲のいい片桐さんか!』


『そう!片桐七海ちゃん!』



片桐七海

星奈と中学1年の頃からあることがきっかけで仲良くなり、俺たち2人と同じ高校に進みクラスが同じである。

とても明るい子で毎日笑顔で過ごしているような子だ



『どうして最初に片桐さんなんだ?』


『七海ちゃんねお葬式の時から泣いていたけどさ、ここ数日も夜になるとずっと泣いてるの。

私さ七海ちゃんには前を向いて元気になってほしいの。だから董哉お願い!七海ちゃんを元気にしてあげて!』


あの明るい片桐さんが夜泣いてるいるなんて想像できないことだが、星奈がいうのならば本当のことなのだろう。



『わかった。最初は片桐さんを元気にする。

片桐さんに話すタイミングなんだが、冬休みが開けた後の3学期が始まってからでも大丈夫か?』


今は年が明ける前だこんな時期に片桐さんに話に行っても迷惑になるだけだろう。


『うん!今年明けのタイミングだし仕方ないね。3学期から始めよう。その代わり絶対七海ちゃんを前みたいに元気で明るい子にしてね。』



『おうよ!俺に任せとけ!必ず片桐さんを元気にしてみせる!』


『頼りにしてるね!董哉!』




彼女の最後のお願いを叶えると誓った俺はこの約束をを破るわけには行かない。

そう決心し、星奈から片桐さんの性格や特徴を聞き3学期に向けて念入りに準備を始めた。











片桐七海side

私の一番の親友が亡くなったあの日から私は毎日のように泣いている。


泣いても何も戻ってこないのはわかっている。しかし、弱い私は泣くことしかできない。

立ち直ることも、前も向くこともできないのだ。

だって私を勇気づけてくれていたあの子はもういないのだから。


「ごめん...ごめんね...星奈ちゃん、高嶺くん...私のせいで...」

もう言葉にしても意味のない謝罪を口にしながら涙を流して今日も私は眠りにつく。


いつかあの子に許してもらえる日が来る事を願いながら。







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