第2話
そこから先はあまりにも時間が経つのが早かった。
星奈が亡くなってた次の日にはお通夜、また、一週間たった明日には葬式もある。
そんな中、俺は現実を受け止め切ることができず、泣くこともできなかった。
ただ毎日何もやる気がおきず、睡眠と食事を繰り返すばかりの生活をしていた。
そして葬式当日の日になった。
お葬式には星奈の家族、親戚や俺の両親、また星奈と仲の良かった友人や学校の先生までもが参加していた。
お坊さんがお経を読み上げている間も俺は何も感じなかった。
いや感じようとしていなかった。
星奈が亡くなったという事実を受け入れるのが嫌でずっと現実から逃げていた。
しかし最後の別れの挨拶の際、亡くなった星奈の顔を見たら、いつもの寝坊してる時と変わらない俺の好きな寝顔をしていた。
その顔を見た瞬間ようやく俺は現実を見ることができ、星奈がもう戻ってこないということを深く実感した。
「....なぁ星奈。これいつもの寝坊なんだろ?
俺さお前を待つの好きだからさ、いつまでも待ってられる。
だからさ目を覚まして約束のイルミネーション見に行こうぜ...」
俺は泣きながら星奈に話しかけていた。
しかし返事は帰ってこない。当たり前だ星奈は亡くなったのだ。
あっという間にお葬式が終わり皆それぞれ家に帰宅した。
俺は最後の別れの時からずっと頭に浮かぶ考えがあった。
「俺があの日イルミネーションなんかに誘わなければ、駅集合にせず最初から星奈を迎えに行ってれば、星奈は事故に巻き込まれる事はなく今も俺の隣にいてあの笑顔を俺に向けていたのではないか。」
ずっと俺は自責に追われていた。
ふと葬式が終わる直前、星奈のお母さんから言われた言葉を思い出した
「小さい頃からずっと星奈の隣にいてくれてありがとうね董哉君。あの子ねどんな時も話の話題が董哉君のことだったの。
今日は董哉と何して遊んだとか、董哉と一緒に勉強をしたとか、ずっとあの子の人生の中にはずっとあなたが中心にいたの」
「あの日の夜だって董哉と今からイルミネーションを見にいくの!ってとても幸せそうな笑顔で私に話してくれたのよ。だからさ董哉君。
あまり自分を責めないでね....」
星奈のお母さんはとても優しい人だからこう言ってくれたが、俺自身が自分を許せないのである。
防ぐことができたであろう事故だったのだ。しかも俺との約束のせいで星奈は被害にあってしまった。
何故自分を許せるという考えが生まれるのか
俺は星奈のお母さんの言葉が響くことはなく
帰宅してからずっと後悔をしていた。
その日の夜、俺は過去に縋ることしかできず星奈との思い出を振り返るためにアルバムを見返していた。
俺と星奈は産まれた頃からずっと一緒にいる幼馴染でもあるので思い出の写真は沢山ある。
幼稚園から中学までのアルバムを見たあと、高校に入り付き合い初めてから取り出したスマホのフォルダの写真まで全ての思い出を振り返った。
写真を見るとどんな場面でも星奈は幸せそうな笑顔をしていたのだ。しかしもうこの笑顔を見ることはできなくなってしまった。
その事実を思い出すとまた涙が出てきてしまった。
「星奈っ....星奈っ....」
泣きながら名前を呼ぶが、もう返事が帰ってこない現実に打ちひしがれていた。
そんな時ふと自分の携帯から着信がなった。
画面を見てみると知らない番号だった。今は誰とも話したくないと感じている俺は着信を無視した。
しかし数分後また同じ番号から着信が来たのだ。2回、3回と無視をしても何度も電話はかかってくる。
もうかけられるのは面倒だと感じた俺は恐る恐る知らない番号からの着信に応答してしまった。
『....もしもし』
元気のない声で電話に出ると、相手から返答が帰ってきた。
『なんですぐでないの!?これ4回目の電話だよ!いつもならすぐに出てくれるのに!!』
それはあまりにも聞き馴染みのある声だった。つい最近までずっと聞いてきた声、誰よりも好きだった人と声が同じだったのだ。
『もしかして...星奈か?』
理解が追いついていないながらも俺は相手に聞いてみた。
『そうだよ!こんなすぐに忘れちゃたの?
16年も一緒にいたのに!』
まさかの星奈本人だった。
亡くなった本人から電話がきたという事実に俺の頭の処理は何も追いつかなくなった。
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