亡くなった彼女から連絡がきたのだが....

金色折紙

プロローグ

第1話

それは12月の雪の降る寒い夜だった。


俺、高嶺董哉は彼女の如月星奈とイルミネーションを見る約束のため、集合場所の駅で待っていた。


「18時集合の約束なのに、まだ星奈きてないな。」


時刻は18時30分を過ぎていた。

俺は心配になり電話をかけた


「.....でない。」


しかし、いくら電話をかけても星奈からの応答はなかった。


「もしかしてまた寝てるのか?」


星奈は寝るのがとても好きで、今までに寝坊で約束に遅れたことが多々ある。


「いつも通り待つか。」


俺は星奈を待つのが好きだ。

星奈は遅れてくるたびに毎回


「ごめん!また寝坊しちゃった!!」

と笑顔で報告してくる。


俺はその笑顔を見るのがとても好きなのだ。

その笑顔を見れるなら何時間だって待っていられる。


そう思いながら待っているとスマホから着信が来た。

星奈だと確信し電話に出た。


『もしもし俺だ。星奈また...』

と言葉を最後まで言おうとしたが電話をかけてきた相手に遮られた。


『董哉兄!!急いで来てくれ!!』


電話をかけてきた相手は星奈の弟の輝介だった。


『お、輝介かそんなに焦ってどうしたんだ?』


『董哉兄急いで大藤病院にきてくれ!姉ちゃんが!姉ちゃんが!....』



大藤病院は俺が住んでる街の中で一番大きい病院だ。

星奈に何か起きたということを知った俺は、 輝介の話を最後まで聞かず、走って大藤病院に向かっていた。




数十分後、息を切らしながら大藤病院に到着した。


「はぁっ.....はぁっ....着いた....」


まだ星奈に何が起きたか詳しいことは知らないが大変なことが起きたことは予測がつく。

普段落ち着いている輝介があんなに焦って話しているところを俺は見たことがない。


息を整えながら病院に入ると輝介だけでなく

星奈の両親もいた。

星奈のお母さんと輝介は泣いており、星奈のお父さんも神妙な顔つきで待合室に座っていた。




「輝介、電話急に切ってごめん今着いた。おじさん、おばさんもいるなんて...星奈に何が起きたんですか....?」


俺は声を震わしながら尋ねた


3人は顔を見合わせながら誰が答えるのか悩んでいる様子だった。

そして星奈のお父さんが俺が答えるといい。

話を始めてくれた。


「董哉君。落ち着いて聞いてくれ、星奈は駅に向かう途中で凍結した地面でスリップした車に跳ねられてしまったんだ。」



「え.....?」



言葉が何も出なかった。


「せ、星奈は....星奈は今どうなっているんですか!?」


俺は今いる場所が病院なのを忘れ大きい声で聞いてしまった。


「今集中治療室にいる。助かる確率は五分五分らしい....」


星奈のお父さんは混乱してる俺に落ち着いて説明してくれた。

そのおかげで俺は冷静さを取り戻しつつあった。


「すみません。病院なのに大きい声を出してしまって。」


「大丈夫だ董哉君。私も仕事から帰宅してこの状況を聞いて病院に着いた時に同じような反応をしてしまった。

今は一緒に星奈の治療が無事終了することを祈ろう。」


星奈のお父さんの言葉で完全に冷静さを取り戻せた

俺は、待合室の椅子に座り星奈の無事を祈っていた。


「星奈...」


どのくらいの時間がたっただろうか、ただひたすら星奈の治療が無事終わることを祈っていたら

集中治療室の電気が消え中から医者が出てきた。


「星奈は大丈夫ですか!?」


医者が出てきた瞬間、星奈のお母さんがすぐに尋ねた。


医者は顔を暗めながら答えた。


「できることは全てやりましたが。残念ながら....」


この言葉を聞いた瞬間、星奈のお母さんは泣き崩れ、お父さんも輝介も涙を堪えることができなくなっていた。


そんな中、俺は現実を受け止めることができずずっと顔を俯かせたままだった。


















 



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る