呉越同舟
どうやら、俺は踏み越えてはいけない一線を越えたらしい。作戦を立案するのは作戦課の仕事だろうが、それは情報課の正確な情報があってこそだ。むしろ、情報課と作戦課は対立するのではなく、連携すべきでは? 身内で揉めても仕方あるまい。
「確かにあなた方の言うとおり、補給ルートの封鎖を提案しました。でも、どのように封鎖するかを考えるのが、作戦課の腕の見せ所でしょう?」
草薙は俺の言葉を聞いて、静かに考え込む。しかし、作戦課のメンバーたちは依然として疑念を抱いている様子だった。
「如月、君の提案は面白い。しかし、我々はまだこの情報が確実かどうかを確かめる必要がある。情報課のデータと合わせて検討し、その後に作戦を立案するのが妥当だろう」と、作戦課の誰かが口を開いた。
草薙は微笑みつつも、説得を続ける。
「確かにその通りだ。情報の確認は急がねばならないが、その間にも敵の補給ルートは動いている。如月の提案を活かし、速やかに行動を起こすことが必要だ。私たちは一緒になって、この任務を果たすために動かなければならない」
「じゃあ、共同作業ということでいいんですかね……?」
俺は恐る恐る確認する。
「まあ、日本が勝つためだ。一時的に協力しよう。ただし、情報が間違っていた場合は我々作戦課で立案した作戦通りに行動する。いいな?」と作戦課。
草薙がうなずく。
「早速、敵艦の補給ルートの確認をしましょうよ。まずは航空写真を再度分析ですね。パターンを割り出せれば、封鎖ではなく爆撃の選択肢も視野に入るでしょうから」
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「敵艦のパターンは割り出せたが、どっちにするかだな。海上封鎖か爆撃か」
草薙は地図の一か所を指し示すとトントンと叩く。問題の場所は幸いにも陸と陸の距離が狭い。機雷での封鎖も可能だ。しかし、それでは時間がかかり過ぎる。
「念には念を入れるべきだな。偵察機を飛ばして、現地調査をすべきだ」と作戦課。
一理ある。偵察だけなら、そう時間もかからないだろう。
松田があくびをしながら「まあ、爆撃の方向になるでしょうね」と言う。マイペースというか緊張感がないというか。
「爆撃ならどの艦艇を使うかが問題だ。近くにいるのは……」
道下が冷静にかつ論理的に意見を述べる。隣の松田とは正反対だ。同じ情報課にいても、こうも違う性格でよくまとまるな。それも統率力のある草薙の実力か。
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数時間後、現地からは「パターン通りだ」という返事が返ってきた。それなら、松田の言う通り、爆撃が一番手っ取り早いだろう。
「じゃあ、次はどの艦艇を使うかですね。道下が言っていたように――」
そこで俺の発言は遮られた。作戦課の一人が走ってくる。
「敵艦の補給ルートが変わったとの連絡が入った!」
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