スパイを炙り出せ!
いよいよ会議当日。三枝さんが「こいつに任せて大丈夫か?」という表情をしている。
「安心してください、俺に作戦がありますから」
そう、何も無策でスパイを炙りだそうなどとは考えていない。スパイも人間だ。心理的に攻めればいい。
「さて、今日の議題は我が軍の暗号についてだ。まずは、重要な話からしよう。我が軍の暗号は解読されている可能性が非常に高い」
三枝さんの発言にあたりがどよめく。問題はここからだ。
「静粛に。単に解読されているわけではない。噂通りスパイが情報を漏洩している可能性がある」
「ちょっと、待ってください! 身内を疑うのですか!?」「根拠はあるのか!」
俺はすばやく全員を観察する。
「三枝さん、身内で疑心暗鬼になってはダメです。今日は新しい暗号を考えるのが目的でしょう? 暗号を変えればいいんですよ」
「しかしだな……。いや、そうだな。暗号を変えるのを優先しよう。我々にスパイがいるとは限らんしな」
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会議は順調に進んだ。どこを改善するか、戦線にいる味方にどうやって暗号の変更を伝えるかなど。
「よし、諸君の考えは分かった。これから、如月と2人で最終調整に入る。追って暗号の内容を伝えよう。今回はこれにて解散」
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「それで、スパイは絞り込めたか?」と三枝さん。
「ええ、もちろん。しかし、あくまでもスパイ候補であって、確信はありません」
「よし、お前にはアメリカ軍の暗号を解いた実績があるからな。新しい暗号表を数日内に作成の上、報告するように」
「実はですね、もう暗号表は作ってるんです。これが新しい暗号表です」
俺は難しい文字列が並べられた紙の束を三枝さんに渡す。三枝さんは受け取るとサッと目を通す。「なるほど、大胆な変更だな」とつぶやく。
「しかし、これではさっきの会議は意味がなかったんじゃないか?」
「いえ、大きな意味がありましたよ。この暗号表、さっきの会議の出席者に渡してきますね」
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「おい、如月! アメリカ軍の暗号を傍受した。解読作業にかかれ」
一度解いた暗号だ。解読なんて造作もない。中身は「日本軍の暗号解読がうまくいかない」という内容だった。
「ほう、いいじゃないか。暗号を変えた効果が早速出たな」
三枝さんが手を差し出すが、俺は応じない。
「どうした。お前の暗号が敵軍に混乱をもたらしたんだぞ?」
「三枝さん、あなたと握手は出来ませんね。スパイであるあなたとは」
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