第23話 はぁ?領主になりたい?ダメです!……いや、やらせてみましょうか?①
「ユフィ、決めたぞ! 僕が領主をやるから、君は休んでいてくれ!」
「ダメです」
「えっ……」
相変わらず突然何を言い出すのでしょうか、この旦那様は。
あなたに任せるなんて、衰退しますと宣言しているようなものでしょう?
ほら、旦那様が入ってくるなり部屋の隅に逃亡した執事長が震えていますよ?
あなたは計算もできないし、土地の名前も覚えてないし、そもそも当家の主要産業すら知らないでしょう?
部下の名前だって1人も覚えていないでしょうし。
覚えているのは抱いた女だけ……いや、それすら怪しいわ。
却下です。
検討の余地もありません。
最近多少は優しさを持ち合わせていることはわかりましたが、能力がないことは明確です。
「しかし君はそろそろ出産のはずだ!」
「!?!?」
私は驚きました。
まさか、旦那様が私の様子に気付いたというの?
私のことなんて放置して遊び放題だったのに?
どういうことでしょうか。
どうせ今恋をしている女性を助けるために政治力が欲しかったとかそういう理由だと思ったのですが、違うのでしょうか?
もしかして本当に私を心配して?
能力がないので無理ですが、その気持ちは万が一もしかしたらちょっとくらいは嬉しいかもしれません。
「ご心配頂けるのは嬉しいのですが、その……大変申し上げにくいのですが旦那様にお任せすることはできません」
「くっ、心配する形を取れば行けると思ったのに……」
「ふざけんなこのやろう!!!!!」
「ふごぉおおぉぉぉおおおおお……」
いけません、つい殴り倒してしまいましたが、お腹の子に負担がなかったでしょうか……。
『エラルドを止める際には力を振るえるようにしているが、それがお腹の子に問題を起こさないように魔法防御を張るようにしているから問題ない』
……ありがとうございます、フリューヴァルス様。
もしかしてずっと見張られているのでしょうか?
『そんなことはない。通常は寝ていて、君が力を振るう時などにわかるようにしている』
重ね重ねありがとうございます。
もし可能なら、私がそうなる前に旦那様を止めて頂けたら嬉しいなぁなんて愚考する次第でございますわ。
『それが、エラルドの思考は私でも読めないし、行動も見えづらいのだ。そういう特性があるからこそ、魔王対策に採用したので、すまんがどうにもできない』
わかりました。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
『あぁ……』
なんていうことがあったのですが、その後、執事長と話をしていて私はふと思いついたのです。
それは、こんな会話からでした。
「今回、戦争を止めたご褒美に旦那様ご自身に爵位を与えるという話があがっています」
「血迷ったのですか、王家は?」
「不敬ですよ?」
「……」
どうしてそんな話になったのでしょうか?
確かに旦那様は敵を粉砕しましたが、同時に女の尻を追いかけて勝手に戦場から離脱してしまったので、それで相殺されたという話だったはずです。
一部の頭がよすぎる方々が、自分にだけ手柄が行き過ぎないためにあえてバカなふりをしている賢者なのでは? なんてことを言っているらしいですが、脳が腐ったのでしょうか?
公爵様からは国王陛下が笑いをこらえながら感謝と苦言を述べられたと聞いています。
それで終わりだったはずです。
「それが、実は旦那様が粉砕した部隊の中にあのグラナルド・アヴェルヴォイドがいたようで……」
「敵国の英雄ですね……」
「敵国が和平交渉に際してやけに旦那様のことを気にされているということで探った結果わかったようです。これで旦那様を褒賞しなければ他国の介入を許すのではないかという声が高まってしまい、国王陛下と宰相閣下がこめかみを引きつらせながら爵位を与える検討をされているようです」
「……」
そんなことをされてはこれまで以上に浮気するようになるでしょう……。
旦那様の身分は伯爵の夫でしかなく、アーゼンベルク公爵家やクルスローデン伯爵家の名前を出しまくりながら見栄を張るスタイルです。
そこに、仮に男爵だったとしても爵位がついてしまえば……。
「いっそ、クルスローデン伯爵家が所有している男爵領などを実際に治めさせるのがいいかもしれませんね」
「自暴自棄はやめていただきたく」
「役割があればあの自由奔放さもおさまるかもしれません。なんなら愛人の10人くらい一緒に放り込めば数年は大丈夫かも……。そうすればこの子も生まれて多少大きくなるし……名案ですわね!」
「私には破滅への一手にしか思えず……」
「よし、決めました。ラヴェール男爵領を旦那様に与えます。王家には褒賞のためクルスローデン伯爵家が爵位を与えたので検討は無用とお伝えください」
「……」
私はさっさと手続きを済ませました。
王家は驚きつつも金銭や商売上の利権などで支援してくれました。
『血迷ったのか』とか言ってすみませんでした。
一方、公爵様は全力でラヴェール男爵領との手を切ってきました。
行動が早すぎますが、何かあったらすぐに文句が来る関係性なので仕方ないかもしれません。
ラヴェール領からはなにやら怨嗟の声が聞こえますが、信じてください。
旦那様は有能です。旦那様は有能です。旦那様は有能です。旦那様は有能です。旦那様は有能です。旦那様は有能です。旦那様は有能です。旦那様は有能です。
ほら、大丈夫そうでしょう?
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