第24話 はぁ?領主になりたい?ダメです!……いや、やらせてみましょうか?②
ラヴェール領が地図から消えました……。
えーと、どういうことかと言うと、私にもよくわかりません。
もともと小さな街が一つと、あとはいくつかの村がある領でした。とくにこれといった産業もない、のんびりとした領地です。
だからこそ、領主初心者な旦那様でもよっぽど変なことをしなければ問題ないと思って預けたのですが……。
「何かわかりましたか?」
「旦那様と共にラヴェール男爵領に入った騎士が1名帰ってきております」
「この度は不徳の致すところで……」
「あなたに罪はありません。全て旦那様のせいですので見たことを教えて下さい」
「はい……」
まず旦那様は数名の騎士や文官を連れて領に入ったとのこと。これは指示通りですね。指示を守れて偉いでちゅね~。
続いて近くにある村を訪れたところ、旦那様は1人の村娘に猛アタック……文官として連れて行った愛人がブチ切れて修羅場になったそうですが、ざまぁ!
一方、その娘は村の中では重要な娘だったらしく、村長から旦那様は拒絶されることになったそうです。一気に2人の女性を失った彼はトボトボと街に戻ったそうですが、その背は哀愁を漂わせていたとのことでした、ざまぁ!
しかし挫けない旦那様は村長が自分を拒絶した理由の調査を開始。この時点で領主の仕事なんて頭の片隅にもなくなっていたことでしょう。
あまりにも予想通りですが、まだ数日でこうなったことに頭を抱えつつ文官は領政をつつがなく進めたとのことで、あとで褒賞を与えることにしました。無事に旦那様が見つかればですが。
一方、恐らくは勇者の力を解放したのだと思いますが、なぜかラヴェール男爵領の中心部にある深い森に入った旦那様と騎士たちは……
『許しも得えずに入ってくる不届き者と思うたが、力あるものじゃったか。失礼した。我はこの森の守り神・リューネルムである』
「あぁ、美しい方。僕はエラルド・クルスローデンだ。あなたは世界樹か?」
『長い時を生きてきた故、周囲の木々よりは力はあるが、世界樹ではない。なにか求めているのか?』
「はい……実は……」
威厳ある守り神様だと思いますが、きっと旦那様のことを誤解なさっていると思われます。わざわざ深い森に入り込み、力を見せるなど、崇高なる使命をおっているかのようです。しかし、ただ女の子の尻を追いかけているだけです。
『よかろう。では我の霊薬を与えよう』
「ありがとう……これで……」
まるで死の淵にいるご両親が助かることになって、万感の思いを噛みしめているかのようですが、繰り返しますが女の子の尻を追いかけているだけです。
そうして全くもって追い求めていない森の守り神様の霊薬を手に入れた旦那様と騎士たちは改めて村に入り、長老に霊薬を見せたそうです。
「なぜこれを?」
長老の驚きに深く賛同します。当然ですわよね。何のために持って来たのか意味が分かりませんもの。長老の発言はどうやって手に入れたのかという疑問ではなく、その言葉通り何のために手に入れて来たのかという純粋な疑問です。
すみません、笑いそう……というか、笑ってもいいですか?
そんなに私の腹筋が憎いのですか?
「では、娘に会わせてもらおう」
「はっ?」
繰り返しますが、この『はっ?』を発した長老の思いを代弁すると、『何言ってんのこいつ』です。
しかし唖然とする周囲の反応をきっと自分勝手にも了承だと捉えた旦那様はそのまま屋敷の中で娘を発見し、何をとち狂ったのかその霊薬を娘に振りかけた。
もう暴行罪とかが成立してもおかしくはない状況ですわね。
こんなこともあろうかとラヴェール男爵領と縁を切ったアーゼンベルク公爵は正しかったのかもしれないですわ……。
しかしこの瞬間、世界が弾けた……。
騎士が言うにはまさにこんな感じだったようです。
霊薬が娘に触れると同時に、緑色の光が弾け、一面に植物が溢れかえったそうです。
そして旦那様も騎士たちも全員、成長する植物に押し流されて村の外まではじき出された。
本当に全くもって意味が分かりません。
その植物は別の村も巻き込み、街も飲み込んだそうで、もうラヴェール男爵領には人の住む集落はありません。
マジで何してくれてんの旦那様?
幸い住民は全員が植物によって男爵領の外に押し流されたものの無事だった。急いでクルスローデン伯爵領で受け入れました。
その中には長老もいたので話を聞きましたが、どうやら旦那様が目を付けた娘は妖精かエルフの類だとのことでした。
昔からたまに村に遊びに来ては恵みをもたらしてくれるので好きなようにさせていたが、まさか旦那様が見染めるとは思わず、さらに森の守り神の霊薬と反応してこんなことになるとは思わなかったと謝罪されました。
もちろんそんな謝罪は不要なので、丁重におもてなしして差し上げました。
その後の調査で分かったのは、元ラヴェール男爵領を埋め尽くした植物からは薬草や薬液、他にも様々な薬の原料が採取でき、林業なども可能とのことで、全力でクルスローデン伯爵家の事業に取り込みました。
「今帰ったぞ……うごぉ……」
今回ばかりは旦那様が恐る恐ると言った体で……なんてことは全くなく、一欠片も悪びれることなく帰って来たので採取した枝で殴りつけておきました。
「なっ、何をするんだユフィ。そうだ、聞いてくれ。酷いんだ。マリアはどっか行っちゃうし、村で見つけたアーテルヌという女の子はいきなり植物になっちゃうし……」
「……旦那様は身重の私を気遣って領主になろうとしたのでは?」
「あっ……うん、そうだ。そうだぞユフィ―。僕が代わってあげるから君は休むんだ」
「むしろ忙しくなったのですが(怒)」
「あっ……」
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