第21話 はぁ?ペットが欲しい?そんなことをしたら
「ユフィ! 僕はピンクラビットを飼うぞ!」
「はぁ……?」
急にどうしたのでしょうか?
旦那様は自分が愛されたい系の痛いおっさんなので、周囲の目を自分から奪ってしまうペットには見向きもしてこなかったはずです。
まぁ、お義母さまから聞いた話では子供の頃に飼っていた犬にお尻を噛まれてから、ペットなんかいらないと、それはもう強情だったとのことです。
なのにペット……。これはきっと愛人にでもプレゼントするに違いありませんわ。
きっと『僕がいない間はこの子を見て寂しさを紛らわせておくれ』とでも言いたいのでしょう。
ただまぁ、自分のお小遣いで買うのであれば特に止めませんわ。
私は今、この前あなたが叩き出した盗賊団の対処で忙しいのですから。
「では、行ってくる」
特に私が反応を示さないことを了解と都合よく受け取った旦那様が上機嫌で出かけて行きました。
「よろしかったのですか?」
空になったティーカップにお茶を継ぎながら執事長が尋ねてきますが、特に問題はありません。
買うのもピンクラビットであれば、あれはただの愛玩動物です。
しいて言うなら、信じられないくらいに可愛いことくらいです。
あぁ、ピンクラビット。世界で最も可愛い生き物。あんな強欲で浮気性で怠惰で飽き性な旦那様に飼われるというなら全力で止め……いえ、しれっと奪って私に懐くように育て上げますが、どうせ愛人に渡されるのなら気にしない方がましよね。
あぁ、可愛い。撫でたい。ギュってしたい。すりすりしたい。
そうだ……私も飼えばいいのよ!
「ダメですからね?」
「むぅ~」
「そんな可愛らしい顔をしてもダメです。そもそもご懐妊なのでしょう? 動物がダメな子だったら、ちゃんとさよならできますか?」
「別々に住んで、別々に通います」
「端から子供と同等に考えないでください!」
「むぅ……」
執事長は鬼か悪魔に違いない。
生まれてくる子は大事です。いくらあの旦那様の血を半分ひいていようと、私が全力で教育して浮気性と飽き性と強欲と怠惰だけは発現させませんから!
一方、私が世界一可愛いと思っているピンクラビットだって、大事です。
だったらどうせ貴族らしく子供との生活は常に一緒というわけではないのですから、別宅で飼えばいいのです。
私にだってそれくらいの自由はあってもよいのではなくて?
「ユフィ様。どうやらこの建物に潜んでいるようです。騎士団が取り囲んで捕まえますので、検分をお願いします」
「むぅ……」
私のピンクラビットへの思いの丈を語って差し上げようとしたのに、お仕事の話を出されたので素直に私は諦めました。
□一方その頃、エラルドは
「ここだな……ピンクラビットをくれ」
「これはこれは旦那様。ようこそお越しくださいました。いつも伯爵さまにはお世話になっております。して、ピンクラビットですか。少々お待ちください」
僕の顔をみるなりユフィの話をしてくるところは減点ものだが、入った店の店主はすぐにピンクラビットを連れて来てくれた。
「今いるのはこの3匹になります。ちなみに用途を伺ってもよろしいでしょうか?」
「贈答用だ」
慇懃無礼に聞いてくるが、使い道なんて決まっているだろう?
まさかこの僕がこのウサギを食べるとでも思うのか?
「そうでしたか。それはようございました。それならこの若い子が良いでしょう。性格も穏やかで、きっと長生きします。プレゼントされた方は、ピンクラビットを見るたびに旦那様のことを思い出すでしょう」
「それはいいな。では、その子をくれ」
「はい」
この店はダメかと一瞬思いかけていたところだったが、さすが商人だな。
選定とその理由は完璧だから、また欲しくなったらこの店を使ってやろう。
僕は籠ごと包んでもらい、はやる気持ちを押し殺しながら、愛しのミューリのもとへ急いだ。
□盗賊団の隠れ家にて
ものものしく周囲には騎士が展開している。
今しがた、この建物に潜んでいた盗賊団に奇襲をかけ、全員捕えたからだ。
私は連れ去られた孤児の情報を追ってここにやってきた。ここに主に滞在しているのが赤毛の女だときいたからだ。旦那様を騙し、子供たちを育むべき孤児院で悪さをしていたあの女。絶対に尻尾を掴んでみせる。
そう意気込んだものの、目論見は外れた。
ここにいたもの達は誰も孤児院の件には絡んでいなかった。
自白もなかったし、魔法で調べても何もなかった。
ただ、盗賊団の構成員であることは間違いがなかったので、全員を拘束し、騎士たちは帰還したので、あとは私たちも帰って報告書をまとめて……
バン!!!
「やぁ、愛すべき君のためにプレゼントを買ってきたんだ。いつも仕事を頑張っているようだからね! さぁ、これを……」
「ありがとうございます。籠ですか? まさか?」
なぜここに旦那様が入ってくるのか分かりませんが、頂けるのであればありがたく頂きます。
「えっ? ユフィ?」
「はい……まぁ、可愛い」
なんとその籠にはとても愛らしいピンクラビットが入っていました。
急に包みを取り払ったので少し眩しそうに目を細めながら見上げてくる姿が可愛すぎます。
「嬉しい」
「えっと……」
「旦那様、ありがとうございます。大事にします」
「あぁ」
まさかピンクラビットを私にくれるつもりだったとは。
突然言い始めた時に止めなくて良かったと、今日ほど思ったことはありません。
帰りの馬車になぜか少し青い顔をした旦那様も乗せて一緒に帰り、執務室にピンクラビットの居場所を作ってあげました。
作業中、執事長にチラチラ見られましたが、ドヤ顔を返しておきました。
***
お読みいただきありがとうございます
そしてあけましておめでとうございます
本年もどうぞよろしくお願いいたします
新年一発目くらいはいつも苦労が絶えないユフィに心暖かいエピソードをあげることができて嬉しいです。
どうか2025年も引き続き応援いただけますよう、よろしくお願いいたします。
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