第20話 はぁ?孤児院の院長になりたい?そんなことをしたら子供たちに悪影響なので却下です!②

□クルスローデン伯爵邸の旦那様のお部屋 (エラルド)


くそっ、ユフィめ。

僕は確かに子供たちにとっては刺激的すぎるだろうが、一度きりの人生、楽しく、そして皆のために生きるべきだろう?


僕を求める女性は数多いるんだから、皆と接し、人生を楽しんでいくべきなんだ。


それをあいつはわかっていない。


しかし、どうするべきか。

このままでは愛しのフェルムが過労死してしまうかもしれないし、寒さで病気になってしまうかもしれない。


子どもたちもだ。


この状況をユフィはわかっていないんだ。

なんて鬼畜な領主なんだろう。


もう任せてはおけない。


僕が自分で乗り込んで、まずは職員として働いてやろう。

そうすれば僕の素晴らしさをみんなが理解するだろうし、喜んで僕に院長の座を渡すだろう。


そうすればフェルムに頼まれた通り……。


よし、やろう!




□クルスローデン伯爵家の執務室 (ユフィ)


「旦那様が勝手に孤児院で働き始めたですって?」

「はい……申し訳ございません。お部屋で大人しくされているかと思いきや、孤児院を見張らせていた職員から報告がありました。お部屋を確認したところ、木製の人形が置いてあるだけで、ご本人は本当に働かれておりました」


執事長が申し訳なさそうに報告をしてきました。

まさかそんな行動力を発揮するとは思ってもいなかったのですが、まぁ働きたいなら働けばいいです。


浮気者で飽き性で怠惰な旦那様ですが、働くだけなら特に問題はありません。

問題なのは孤児院の院長になった場合、院長室で卑猥な行為をやりまくり、さらに仕事はしないという最悪の姿を見せるであろうことです。


真面目に働いているというのであれば、一つここは……。






□孤児院にて


「今日はこんなところかな」

「ありがとうございます、エラルド様。まさか手伝って頂けるとは思ってもおらず」

「構わないさ。鬼畜な領主の圧政に苦しむ孤児院を僕の手で救ってあげるのだからね」


少し青い顔をしている長い黒髪を結んで背中に垂らした清楚な女……あれがきっとフェルムという人なのだろう……と気持ちよさげに会話している旦那様。

誰が鬼畜な領主よ!?

何が圧政よ!?


思わずフリューヴァルス様に頂いた力を使って今すぐ旦那様をぶちのめすところでしたが、かろうじて堪えました。


そして引き続き孤児院を探ります。


見た感じおかしなところはなく、貧窮しているということもないようです。

旦那様も普通に働いています。


この時点でその女が言うことを信じれないとは思わないのでしょうか?

思わないのでしょうね。


引き続き、彼らの様子を見つつ、会話を盗み聞きします。



「フェルム、僕の分の給料はいらないからね。少しでも子供たちに回してくれ」

「まぁ、素晴らしいですわ、エラルド様」

さも恩着せがましく言っているその口を今すぐ縫い付けたい……。


なにせ旦那様はこの伯爵領で一切の仕事をしていないにもかかわらず、平民10人が一生遊べるくらいのお金を毎年貰って、好き放題遊び惚けているのだから。


結婚するときから覚悟していたし、いざ仕事をされても酷い状態になる予想しかできないのでずっと寝てていただきたいくらいですが、それでもこんな物言いで女性に迫っているのを見ると怒りが湧いてきます。


ただ、今は我慢です。


なにせその女は……。






「きゃぁ、これはいったい!?」

「何をするんだ、離せ! フェルムを離せ!?」

突入した騎士たちによって、フェルムという女性が捕らえられます。


旦那様は私がフリューヴァルス様に頂いた力で押さえつけます。


「おい、ユフィ! やめろ! 鬼畜な領主であることは知っていたが、孤児院で働く清らかなフェルムを捕らえるなど、気でも違ったか!」


あっ、いけません、つい力が少し女の方へ……。


「ぐぅ……」

「なっ、フェルム! ……ん?」

「旦那様、その女性は変化の魔法で姿を変えていたようですわよ? それでも離した方がよろしいでしょうか?」

「なっ」

「なにぃぃいいぃいいいぃぃいいいいい!?」


神の力が流れたことによりあっさりと変化が解かれ、現れたのは真っ赤な髪をした気の強そうな女。


少女では全くなく、たぶん旦那様より10歳は上に見える女で、当然ながら旦那様の趣味の範囲外です。


「まさか、騙していたのか!?」

「くそっ、あと少しで孤児院の鍵を手に入れられたのに……」


鍵とは何でしょうか?

この孤児院に秘密の部屋でもあるのでしょうか?


領主になってある程度の時間を過ごしてきましたが、過分にしてそのような話は知らないのですが?


私は執事長を見るが、彼も知らないと首を振っています。


しかし問題はそこではありません。


騎士団が捕らえていたと思ったのに、しれっとその手を逃れ、孤児院の屋根に上っている点です。



「降りてくるんだ! フェルムをどこにやったのか言え!」


旦那様の中ではフェルムという美しい少女は実在しており、赤い髪の女によって捕らえられた悲劇のヒロインであるようですわね。


そんなバカな……。


「バカな男ね。フェルムは私さ。私が化けていたのさ。ずっとね!」

「くっ、なんだと!? それじゃあ、僕はこんなおばさんの腰を抱き、キスをして、ベッドを共にし、愛を囁いたというの……ぐはぁっ!?」

「なにしてるのよ、バカぁああぁぁああぁあああああ!!!!!」

あんまりにもなことを言いだしたのでとりあえずぶん殴っておきました。



まったく……。

見た目にコロッと騙されて何の障壁も感じずに行動するなんて、なんて愚かなのでしょうか。




お腹の子に、ああはならないように毎晩語らないといけないわね。



ちなみに、フェルムという女は騎士団が拘束したものの、幻術を使われて逃げられてしまったらしい。

ということにして旦那様には説明し、一方で騎士たちにはフェルムの仲間たちの尻尾を掴むために活動を続けさせるのだった。

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