第19話 終わらせる

麗子といることで安定し、ある程度は生活もできていた。

でもやっぱり日が経つと、遠慮が強くなってきてまた溜め込むようになってきた。


麗子の目を盗んでよくベランダに出て煙草を吸ってると、湧いて出てくる希死念慮。

でも、麗子の悲しむ顔を見たくなくて耐えていた。



――――――麗子が眠ったある夜の事、

リビングのソファで真っ暗な中、天を仰いでいた。


無意味に流れ出てくる涙と消えたい欲…。

耐えられなかった。


―――――――――呼出音。


『どうしたの?』

『……俺産んで幸せだった?』


相手は直ぐに勘づいた。


『あんた今どこ。』

『麗子の家。』

『家のどこ。』

『リビング』

『行くから。そこかうごかないで。いい?』

『…ねぇ、俺の言ったこと聞いてた?』

『今行くから』

『聞いてた!?これ以上迷惑かけたくないんだよ!!誰も振り回したくないんだよ!!』


『だったら黙ってそこにいな!!』


母が久しぶりに怒った。

僕は小さい頃から頭がおかしい。

母に叱られると満たされる。初めて手をあげられたのは幼稚園くらいの時。


僕の目を見ながら僕をつねる母が居て、すごく安心した。

『罰』でもなんでもなくて、『幸せ』だった。

それからだと思う。母の痕が体中にないと不安を感じる。


今もそう…。麗子の痕はなんとなくある。

でも、、僕は……この期に及んで母を求めていた。



――――――『今着くから。』

『母さん…もういいよ。』



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る