第17話 あの夜のこと


麗子への苦しさに気付いた日の前夜、帰宅途中の横断歩道でトラックの前に出ようとした。


すると、麗子に引き戻されて思い切り頬を叩かれた。


「もう限界!!しっかりしな!!しっかり生きな!!あたしが生きてる間はあんたにも生きててもらうから!!一緒に生きててもらうから!!」


僕は意味がわからなかった。

『一緒に…生きる?…俺が?麗子と?…』


でも直後に抱き寄せられて力の限り抱きしめられた。

……不思議だった。今まで何度も何度も抱きしめられたのに、抱きしめたのに、僕は初めて…


『死にたくない』と思った。

それと共に、胸の苦しさを覚えた。


麗子のいい匂いと、胸の苦しさでたまらなくなって、キスした。


「…ごめん。そんな時じゃないのに。」


すると、麗子も僕にキスして言った。


「そんな時でしょ?」と。


苦しかった。本当に本当に…。締め付けられていた。







―――――――――――――「麗子、したい。」



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