第11話 代わり

――――――とあるBAR。


少し薄暗い席に待ち合わせ相手がいた。


真っ直ぐに歩いていって隣に座ると、どちらからともなく抱き寄せた。


「かなり重症みたいね。」

「もうどんにもなんない」

「麗美でも?」

「うん。」

「…流星、私の所来る?」

「いい。行かない。」

「怖いの?」

「どうせ抱えきれない。」

「……麗美から聞いた。あんたここ直近で二回やったんだって?」

「…。」

「ほっといたらまたやるでしょ。どうすんの?措置入院とかなったら。帰って来れなくなるよ?」


「……麗子。助けて。」


麗子は僕の首に手を回してキスしそうな距離で僕の目を見た。


「……してよ。」

「そんな簡単にはしない。」


耐えれず僕から重ねた。


「あんたはこんなんじゃ足りないでしょ?」


「……どうしたらいいの。」

「何もしなくていい。いいの。大丈夫。」




………優しく麗子に包まれていた。





――――――――――――麗子の自宅。


僕は麗子の膝の上に頭を乗せていた。


「ねぇ…麗子れーこ。」

「うん?」


麗子の手を僕の手に置いた。


「あんたも辛いね。」

「母さんでも無理だった。」

「あの子よりあたしの方がいかれてるから。」


「ずっと構ってて。じゃないとしぬぞ。」

「…変わんないねあんたは。」


起き上がってそう言うと、麗子は僕にキスした。


「足りないんだ。全然足りない。」

「何が足りないかわかる?」

「…分からない。」


すると麗子は僕を寝かせて頭を撫でながら、直接僕の体に爪を立てた…。


「母さん…」

「似てるでしょ?でもね、あの子にこれは出来ない。」

「んぁあっ!!…」


手も空気も全部母そのものだった。


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