第5話 見えない嫉妬

―――――――――さらに10年後。


「流ちゃん」

「ん?」


夜、仕事から帰ると母に呼び止められた。


「…女の匂いする。」

「香水?」

「…かなぁ。キツいのつけてる人いるの?」

「柔軟剤?が若干強い人はいる。」

「そう…。」

「先に風呂入ってくる。」

「うん。ご飯あとからにするね?」

「ごめんね。」

「大丈夫。」



――――――――――――その日の夜。


普段、母と寝ていた。

母の頭元で職場の女性とメッセージアプリで話していた。



『凜音、今日、香水付けてた?』

『うん。嫌だった?』

『俺は好き。』

『なんかあった?』

『母さん』

『あぁ…』


『でもつけてて。あれ好きだから。』

『わかった。』


『ねぇ、またしよ?』

『「しよ」?』

『してください。』

『だよね?』


――――――――――――――――――。


ここ数日母さんがおかしい。


朝になると目覚め直ぐに僕の首と体に爪を立ててキスして求め始める。


もしかしたら…何か感じてるのかもしれない。






――――――――――――数日後。


「おかえ…どうしたの??」


僕は焦燥しきった顔をしていた。



「流星??」


もう何も耳に入ってこなかった。



母は僕の前に来て、僕の顔を支えて目を合わせた。


「流星。何があった?」

「…俺は間違ってるの?」

「なんの事?」

「……俺は母さんといたい。母さんが好き。麗美が好き。ずっとずっと麗美といたい。それっておかしいの?気持ち悪いの?普通とは違うかもしれないけど、俺…麗美しか要らない。」


「あんたがそう思うなら貫けばいい。私もそうしてる。」



この日、凜音から面と向かって『マザコンはおかしい』と言われた。それによって少し心を開いた人なのもあってダメージが大きかった。




「……」

「流星。おいで。」


僕はベットに突き飛ばされて上にのられた。



「麗美…」

「終わったんでしょ?」

「…うん」


母は見抜いていた。

繋がらずとも通いあったことを。


でも僕は母が良かった。







―――――――――母は僕の求める全てを叶えてくれた。







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