第3話 歪んだ愛情

『流星、夜、居てよ。いい?』


当日朝、母は念押しした。




―――――――――――――19時。


『…あれ?流星君まだ帰ってきてないの?』

『あの子帰ってきたら必ず顔見せに来るから。』

『部屋に居るとか?』

『何回か見に行ってるけど居なくて。』



―――――――――麗美のスマホが鳴った。


見た事ない市内からの番号。


『はい…。』

『県立勝浦病院の救急です。長良ながら流星さんのお母さんでしょうか?』

『はい。。』

『息子さんが当病院に意識不明の状態で緊急搬送されました。今すぐ来ていただけますか?』

『え?…意識不明?!…なにがあったんですか?!…』

『学校の校舎裏で大量に薬を飲んで意識をなくしているのを生徒に発見された様です。』

『あの子……行きます!!すぐ向かいます!!』


『流星くんなんかあったの?』

『今日は帰って。』

『送ってくよ?一人じゃ不安でしょ。俺も心配だし。』

『いいの。2人にさせて。大丈夫だから。』

『本当に大丈夫?送るよ?』


『いいって!!あの子があたし呼んでんの!!早く出て!!』

『わ、わかった。』




――――――――――――――――――。


『流星!!…あんたなにやってんの…。』


母は眠ってる僕を見るなりそう言いつつ自分を責めた。

今朝、僕に言われた事がずっと頭の中を駆け巡っていた。

僕はあの時初めて真っ直ぐに母にぶつかった。

母が幸せになるならと。でも自分の気持ちもぶつけたかった。



―――――――――――――――翌日。


『母さん……』

『流星…。』

『…ここは?』

『病院。先生が救急車呼んでくれたの。』

『…チッ。。』

『一歩間違ったらあんた死んでたんだよ?!』



『それでよかった。』


『なんで?!なんでそうなるの?!』

『俺、麗美に言ったよな。麗美が他の男に取られるくらいなら死んだ方がマシ。』

『流星……。』

『行けよ!!消えろよ!!俺が邪魔なんだろ!!』



僕はしんどくて重い体を起き上がらせて、

点滴を引き抜いた。


『流星!!なにやってんの!!』

『うるせぇ!!黙れ!!くそばばあ!!死ねなくて悪かったな!!死にぞこなって悪かったな!さっさと男の所行けよ!!邪魔は消えてやるから!!』


『流星!!……』


母は思い切り僕の頬を叩いた。


『叩けばいいだろ!!叩いて何が変わんだよ!!母さんが居なくなるのは変わんねぇだろ!他の男とやってんのも気持ちわりぃんだよ!!なんで俺じゃねぇーんだよ!!なんでだよ!!殺すぞその男!!俺から麗美を取るな!!麗美を取るな!!……』



僕はまた母に頬を叩かれた。


『殺せよ!!産んで失敗したんだろ?!なら殺せよ!!死んでやろうと思ったのに!!叶えられなくて悪かったな!!』


『あんたを死ぬ思いして産んだの誰と思ってんの?!死ぬほど腹痛めて産んで育てたの誰だと思ってんの?!あたしだって誰にもあんたあげたくなかったよ!!けどあんたでしょ?!先に女作って連れ込んでたの!違うなんて言わせない!!家でやってんのも知ってんだからね !!何人連れ込めばきが済むの?!いい加減にしてよ!!』


『……母さん??』

『あたしだってあんたがいいの。けど親子だから。母親だから。だから我慢してんの…。』




僕は…母親にキスした。

小さい時以来だ。


でもこの時は違った。

初めて…舌を絡めた。

母は驚きも避けもしなかった。



――――――――――――『流星。』

『うん。』

『あたし、別れるから。』

『別にいい。麗美が幸せなら。』

『あたし、抱かれてない。』

『んなわけねーだろ。』

『あんたと違う。そんな簡単にやったりしない。』

『じゃあ知らねーんだな?』

『驚くと思うよ?大きいの入ってるからね。』

『じゃあ知ってんのは俺だけか?』

『そうよ。あんただけ。』




『こっち来て…』



――――――――――――屋上の影。


『流星…』

『黙って。しゃべんないで。』

『本気?ここで?…』

『ムカつく。触られたりしたんだろ?やらずとも。』

『っ……キスくらいはね…』

『……許さねぇ。』

『……。』

『足りるはずねぇだろ。もうガキじゃねぇんだよ。』


としたい?』

としたい。』

『じゃあ、さっさと出て。欲しいんでしょ?』

『…………。』


『……っぁぁ。もう…。…どうせならベットがいいんだけど?』

『おあずけ?』

『早く退院しなさい?そうしたらいくらでも相手してあげる。』

『今すぐ出たい。』

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