第2話 母と子

――――――――― 麗美 19歳。


『凄いわね。立派に入ってる。』

『うるさい。関係ないでしょ。産めばいいんだから。』


―――――――――『痛い!!死ぬって!!』


『まだ来るからね。産むのも育てるのも死闘よ。今が耐えられなかったら誰かにあげなさい。』

『そんなことしないから!!……いったい!!……』



――――――――――――『………』


生まれてすぐ、赤ん坊は泣かなかった。


『え?…泣かないの?泣くもんじゃないの?』

『大丈夫。たまにこういうこともあるの。』


産科医は産まれたての赤ん坊の口の中のものを取ってを逆さにして叩いた。


……泣かない。


暫くそれを続けると、、



―――――――――『オギャー…』


かろうじて泣いた。



『生きてんの?あたしの子。』

『生きてる。大丈夫よ。よく頑張った。』




――――――――――――5年後。


『ママ、ばぁばの所行こ?僕とふたりで。』

『そうしよっか…。』

『僕はママがいればいい。ママさえいてくれればいい。』

『ありがとう…。私も流ちゃんが居ればいい。』



5歳の僕は麗美との未来だけを見ていた、

麗美の笑う顔が大好きだった。



――――――――――――それから10年後。


『流ちゃん、明日の夜居てね。呼びたい人居るからさ、一緒にご飯食べよ。』

『…飯なら一人で食う。』


なんか、嫌な予感がしてそう答えた。


『なんで?みんなで食べれば美味しいのに。』



母さんと夕飯を食べてる時にそんな話になった。

何となく知っていた。母に男がいることを。僕も彼女は何人かいたし、普通に親子だった。

でも、本当は隠れマザコン。母さんが好きで好きでたまらなかった。



――――――――――――翌日。


『流星、夜ご飯一緒に食べようね。』

『……聞くけど「男」か?』

『そうよ。』


麗美は僕の目を見なかった。


『あっそ。で?「結婚する」とか抜かすわけ?』

『…私も「幸せ」になりたいの。』

『好きにすれば?』

『認めてくれないの?きっと流ちゃんも認めてくれる人だよ。』



『……麗美。』

『…?』


小さい声で名前で呼んだ事を母は聴き逃していなかった。少し驚いた顔もしていた。



『俺は麗美と飯が食いたい。2人で。それのなにがいけない?俺と麗美の間に「邪魔」はいらない。むしろ俺が「邪魔」だって?だったらいいよ。俺が消えればいいんだろ?「どうせ邪魔」なんだから。』



――――――――――――――――――。


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