師の背中を見て
その日の夜、ヨシュアは一人、ギルドの二階の自室で物思いに耽っていた。
「…………」
ベッドの横たわり、ふわりと香る石鹸の匂いに、深い郷愁を感じながら昼間の惨劇――授業――を思い返す。
(アマノさんには感謝してる。彼のお陰で、今日やっと久しぶりにちゃんとした食事が取れた。風呂……というお湯で身体も洗えた。服も新しいのが買えて、着替えられた。全部スライム退治のお陰……だけど明らかに、アマノさんがいたから多めに報酬とかくれたような感じがした。僕は……この世界でも誰かのお陰で生きられてる)
彼は貰った報酬で身支度や身の回りのアレコレを全て、ハイナに金銭を払う事で済ますことが出来た。彼女は「ギルドだけじゃ食ってけないから下宿みたいな真似もしてるんですよ~」と言って、食事や衣服、そして湯浴みの世話までヨシュアに施した。その上、薄汚れたスウェットまで洗濯をしてくれていた(その折、虫団子が出てきて「異世界恐いんよ~!!」と気絶しかけた)。
自分の顔を撫でると、伸びた髭がくすぐったく、この世界に来てからの時間を物語っているように感じる。
(………………)
身体を包む疲労感。急速に睡魔に襲われる中、
「――よし」
その眠気を払いのけるように立ち上がると、木刀を手にした。
(僕に出来る恩返しは、今日教わった事を、ちゃんと出来るようにすることだ。明日は起きたらバトウさんの講義だ。みんな、僕のために時間を割いてくれている、僕も頑張ろう)
ヨシュアは、その後、アマノに教わったことを反復しながら何度も抜刀から思い返し、練習に励んだ。時も忘れ、折角身体を洗ったのにも関わらず、彼は必死に、汗をかいた。それは夜が更に深くなるまでずっと続いた。
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