第21話 素晴らしきこの世界

4人が朝早く目覚めると、列車は高原を走っていた。展望デッキには既に多くのお客さんが居る。お目当ては、ロッキー山脈だ。山肌は既に雪景色で、神々しいまでの景色だ。この景色を観るために彩達4人は列車に乗ったのだ。そして今、その光景が眼前に広がる。感動という2文字が心の中を満たした。そして、心が感じる侭にシャッターを切った。どれほどの想いがこの時を待って居たのか。そう感じながら、夢中でファインダーを覗いた。どんな素晴らしい技術も、どんな素晴らしい理論もその前では無力だと感じさせるほど、その景色は美しい。

 そして列車はその神々しい山の最寄駅デンバーに滑り込んで来た。

デンバーという場所は、西部開拓時代のアメリカを彷彿とさせる部分と、芸術や音楽と言った側面でも栄えており、且つその文化を支える雰囲気が人気の街だ。

1年のうち300日位い晴れの日があるという自然環境があり、100年の歴史があるデンバー駅や、街やその周辺には、一流レストランや、パティオで食事を楽しむことが出来る店がある。また、レット・ロックス・パークと言う野外劇場があり古代の岩と驚くほど美しい夕陽が見られたりする。その劇場には世界のメジャーなミュージシャンが出演したりもする。そして一行はこの駅に降り立った。

 朝8時少し前に駅に降りて「取り敢えず朝食にしよう。」と言うジェイムスの意見に皆賛成した。駅からそれほど離れて居ないカフェに入り朝食を注文した。サンドイッチにコーヒーをそれぞれ注文し、今日の予定を話す。「先ず、レンタカーを手配する。その後、街のあちこちを見て、今日の宿泊できるホテルを探す。明日、朝早くホテルを出てロッキー山脈に向かう。夕方までにホテルに戻り、レストランで食事にしよう。」とジェームスが言うと、マリーが「私、植物園に行きたい。」と言った。するとロバートが、「それなら、その翌日もデンバーにステイして楽しもう!」と言う。彩が、「それなら、2人ずつに分かれてそれぞれ行ってみたい所に行くっていうのはどう?」と切り出した。すると他の3人は少し考えて、その意見に賛同した。

 最終的にジェイムスが「先ず4人でレンタカーでロッキー山脈までは一緒、ホテルを決めて、そのあとそれぞれに分かれてもいいよね。」と言った。その意見に皆んなの意見が一致して話はまとまった。

 駅近くまで戻り、レンタカーを借りロッキー山脈に向かった。ここからは大凡90分位で到着する。麓の駐車場にレンタカーを止め、歩って景色の良い場所まで向かった。ジェイムスも彩もしきりにシャッターを切り、歩いていく。そして、途中景色の良い場所を見つけると、三脚を立て4人で山をバックに記念撮影もした。寒さで皆鼻の頭を赤くしながら、白い息を吐き、はしゃいでいる写真が大切な思い出の1ページに加わった。陽が高くなり、少し西に傾きかけた頃、街に戻ってきた。

 ホテルを探して今日の宿を確保した。ツインの部屋を2部屋予約し、料金を払いルームキーを受け取った。彩とマリー、そしてジェイムスとロバートに分かれ夕食の時間を確認した。「18時でいい?」と彩が言うとジェイムスとロバートが手でOKのサインをした。マリーと部屋に入った彩は、どちらが先にバスルームを使うか話し合った。時間がかかる彩が先に使い、そのあとマリーが使う。「明日は交代ね。」と彩が言うとマリーは笑顔で「うん」と返事をした。

 程なくして、2人の着替えが終わり、出かける準備ができた。少し時間があったので今日の出来事を話し合っていた。「やっぱり来て良かった。この場所に来なければ感じられない空気感が、旅してるって感じで、とても良い。」と彩が言うと、マリーも同感した。そんな、1日を2人で振り返っていると、突然マリーが顔を曇らせて、「彩、話しておきたい事があるの」と言い出した。「どうしたの?」と聞くと、「私、ロバートがとても気になるの。この気持ちは恋かしら」突然のカミングアウトに彩は目を丸くした。

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