男たち
「ここか!俺らが金で買ったお姫様がいる部屋ってのはよ」
めたくそ説明的なセリフを吐き、開かれた扉から重い靴音と共にヒゲ男が二人現れる。
めたくそ高身長に思えるが、音から察すると百キロない程度の体重か。
ああ、あちきが小さいのか。
つーかこいつらむちゃくそ臭いぞ・・・皮脂とアンモニアの臭いだ。
「ガキか。まぁいい、お前は黒い方から始め・・・うおっ」
隣の男にコトバを投げこちらへ歩み出した男は、なぜかたたらを踏んで後退し、尻から床へ座り込んだ。
「なんだこの小さい・・・おわっ」
見ると、小さい女の子・・・大人の男と並ぶとマジでちっちゃい・・・スヴェトラセルフィマが二人目の男のヒゲを掴み下ろし、扉を閉めて廊下へと消えた。
部屋に残ったのは空になったティーセットと男たちの前世浮浪者のような体臭の残り香、そして静けさだった。
え?今のあちきと変わらない30キロくらいの体重しかない女の子が、控え目に言って百キロの水袋二つを秒で排除しちゃったの??
前世で体育大出の若いのと会社の敷地内の草刈りをしたシーンを思い出す。
社会人になってこんな働いたの初めてじゃねーか、と山盛りになった草を前に万悦の感に耽っていると、ああ結構やりましたね、向こう行きましょうと言って去ってゆく若い奴の持ち場には二倍の高さの巨大な山が二個出現していたのだった・・・
格闘技てああゆう奴・・・おひと達に通用すんの?
・・・いや、ソバットなら十分効くだろ。
入れば、な・・・・
思考が前世の思い出に迷走してると、廊下から声が立つ。
『姫様、無力化しましたので二人を部屋へ入れます。よろしいですか』
「苦しゅうない」
え?入れんの??なんで??
扉から汚臭と共にうなだれた二人の男を引き入れた黒髪女子が入ってくる。
「この二人を排除されると不味いので保全を願い奉ります」
奉られても・・・ええ・・・
音もなく閉まった扉に目をやり、二人の男へ目を移す。
ふたりは悄然をうなだれ、只ひたすらに床へ視線を固定していた。
「おまえたち、身上は。どういった者じゃ」
くせえんだよな・・・
ふたりは目くばせし、床へとヒザを着いた。
「畏れながら、御身を金で購い、我欲を満たさんと侵入した者です」
目は床へ向けたままだ。
なんだ?恐れているのか??
あちきを!
うーん、やっぱこのトシになっても畏れられるて気持ちいいわwww
「そうか。すると私はその方らへ体を開かねばならんようじゃな」
ため息。
いや、それは、など何故か男らより遠慮の主張が上がる。
「よい、よいて。スヴェトラセルフィマが戻れば私より仕儀詳らかにしようぞ、来るがよい」
たしか同衾部屋が併設されてるはずだ。
占いの塔と言っても、その実は娼館のようなものだ。
巫女姫のコスプレで愉しめる店、て感じ。
「畏れながら!」
男から強い言上が入る。
「なんじゃ、ビックリするじゃろ・・・申せ」
「御身がその気であそばされましても、我らの身命すでに窮まっておりますれば、何卒の赦免をお願い申し奉ります」
赦免願い奉りそうろうてか。
なんなん・・・臭いし、何しにきたんだよこの男たち・・・
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