ティータイム

茶菓子が、すごい。

フルーツフレーバーの濃厚生クリームにしっとりスポンジ。

ジャムやクリームで何層にもレイヤーが組まれ、前世と変わらぬ溶けるような舌触りと幾重にも迫りくる甘味の波状攻撃。


・・・マジでトぶわコレ。


つか、今までスゴイと思わなかった自分が凄すぎる。


オーパーツだろ!こんなん!

しかもほど良く冷えてるし。


「スヴェトラセルフィマ」


「はい」


「あちき達が当然のように食べてるコレ、どう考えてもディナーに三日前の牛の丸焼きが出てくる食文化とは剥離してますわよね」


「あちき・・・姫様、その自らの呼ばれ様はいささか・・・」


うるせーだまれ。


「食中毒で寝込んだあちきを、スヴェトラセルフィマ。あなたは・・・どうしてあそこまでに尽くすのですか」


ウェット系な思い出で話題変更を試みる。


あ、記憶無くなっちゃったwww系のウソムーブしなくていいのは楽だな・・・いや可愛く美しかった夢に生きる少女の記憶消してくれ!痛辛すぎるやろ!!!!!!


ゲロとババで大変だったからな・・・そう、前世でも食中毒は何回かあったけど、水洗便所あるだけで全然違うわマジで。


家格的に、公家臣籍のこやつがそんな世話までするほどの物件じゃないのよあちきは。


「純粋に家の政治方針です」


「それだけですか」


「無論、それが第一ではありますが・・・姫様」


ググイ~~~!と女騎士が寄って来た。


「私をお望みであれば今すぐにでも褥へとお連れ致しますぞ」


うぞぞぞ、と全身が総毛だつ。


「そうですか・・・お前が望むのであれば、いつかこの体、褒美として下げ渡しましょう」


鳥肌を粟立てつつ、さらりと冗談を返す。・・・冗談だよな??


あちきの問いに寂寥を察した女騎士のジョークをジョークで返した・・・ていう形を作る。

頭の回転はいいのかなあ。


「そのようなつもりでは・・・失礼いたしました」


悄然とする女騎士。

あれ?不味った??


「そうですか・・・でも、忠に報い賞するにはこの身の下賜以外モノが無いのですよ。おそらくはそのうち・・・いえ、今夜すぐにでも処女を食い散らさんとこの身を金で買った野卑な男たちが」


「そのご心配は無用です」


なんか落ち込んだ姿に後ろめたさ感じでズラズラと言い訳してたらめたくそ自信にあふれた声で遮られた。


うーん、そういやこの女騎士も同じトシだったわ。


数え歳年度毎全国民一斉更新年齢だけど。


男からの気の入らない張り手だけで部屋の反対側まですっとんで行きそうな頼りない細く小さな体でそう言えるってのは稚気なんだろな・・・


つーかその剣、使えんのかよ・・・


ケーキの最後のひとかけらをウーロン茶みたいなので流し込むと、女騎士が佩く十字の柄ごしらえの剣を見る。


鞘の上からでもそうとうの身幅だ。

ナタくらいあんぞ・・・



「スヴェトラセルフィマ。その剣は」


マジ振れんのか、刀身は竹や木なのでは?と続けようとした所で、廊下からの悲鳴のような誰何に止まる。


野卑な男の怒号。


「来たようですわね」


カップとソーサーをよけたテーブルの上、固く組んだ手とその下の足が震える。


あちきはこの身に迫る直截な凌辱を察し、怯えているのか。



・・・かわいいwwwww

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