さっきまでさ~

占堂へと呼び出され、この水晶に向かう迄・・・昨晩の夜会で出会った美しい少年を思い出していたのよ。


目があうと、色の抜けた長いまつ毛を僅かに見開いてそのまま視線を止め・・・伏せるように外らせたとび色の瞳。


あの少年は、あたし・・・おじがアタシてキモくないか?・・・あちきにすっか。


これならまだ罪は軽い気がする。


そう、罪だ。


昨夜目にした少年に心ときめかせていた少女を乗っ取り汚してしまったこの罪科・・・うっ、涙がでてきた!


なんやねんふざけんなよ転生!!!!!!!!


美しい少年に恋を夢見胸を高鳴らせていた、あの可愛く可憐な少女を返せ!!!!!



せめて、別人格で脳の片隅に存在していて欲しい・・・無理だわ。



どー考えてもあたしは俺。オレはあたし。



両親が居ないのがせめての・・・



だばーーーー!!!!!とナミダが湧き出す。




前世のオレほどまでも生きれずに相次いで死に去っていった両親。


強く激しい悲しみに締め付けられ、同時に無垢な子供を見せることが出来たという深い安堵に慰められる。


ああ、子供ん頃って親のこと大好きだったよなぁ・・・て自分の子が出来た後の後悔と感謝の情諸共に前世の両親も思い出す。



・・・あれ?あんまり・・・いや!この少女のがより強く自らの両親を想ってたってコトなのよ、もう考えるな!!


いや~マジ今でよかったわ転生。


王国のお荷物、負の遺産、役立たずの占い師風勢が王統にある不名誉がどうたらとか国中がらディスられ怒りと妬み嫉み、あらゆる暗い負の感情にまみれてる今のあたし・・・あちきで。



いいな、あちき。



ちょっとメランコリックでお耽美な精神状態を秒で吹き散らせる威力があるわ。


つーか、めたくそ体が軽い。


ジムワークで追い込んで飯食いまくった翌々日くらいに体が軽い。



通ってたジムを思い出して、自らの下腕を見る。


・・・棒?


「いや、コレってナニをどー鍛えてもムリだろ・・・」


指を畳み、コブシも握ってみるが、このぷにっ・・・とした瑞々しい感触。


とても人を殴れる状態へ持っていける気がしない。

指の長さと比して手の甲が小さすぎるのか・・・鍛錬内といえなくもないけど才能無いのがココからだと懸命レベルでくそダルい・・・


胸前で手首を返し、下蹴りを左右交互に素振る。


ボバッ!とスカートを蹴る音と共にパンプス(たぶん)がすっ飛んでいく。

なんか音がかっこよく鳴って気持ちいいwww



「スカートか・・・」


両足から力が抜け、へにゃりと座り込んでしまう。



女・・・はぁ・・・


いや、たしかに予言の巫女が活躍する世界つったけどさ、主役格の男に転生させろよ!

なんで女なんだよ・・・女てナニ出来んの?オナ二ー??

カガミ見ながらオナ二ーするくらいしか可能性がねーじゃんよ。


それに股の間の違和感と下っぱらのミョーな筋肉痛・・・じゃない、生理痛かコレ?

多い日も安心のしっとりサラサラ座っても染み出さないナプキンてこの世界ねーのかよ勘弁してくれ・・・つか女騎士とか生理中だと鞍がヌメって落馬するのでは?


なんだこのオッサン歴を思い出した途端に沸き上がってくる様々な不安は・・・

自分に関係するもんなんて少ないし、まじでうざい。


部屋の中を見回す。


めたくそ殺風景だ。


つか、ここに通わせられるようになって三年、初めてじっくり部屋を見たわ。


石壁。


天井は屋根裏も作られない石組で閉じられているだけ。

冬はめたくそ寒い。


あー、春夏秋冬があんだよな。


手を突いている床は磨かれた・・・石かコレ。


うーん、壁が石組だし、ハリ渡してその上に乗っけてんだろ?

石床なんて地上階より上に貼るかフツー・・・



「姫様、お持ちしま・・・どうされました?!」


?・・・ああ、しゃがみ込んでるからか?


しかし音無くドアを開き入ってきやがった・・・オナ二ーしてたらどーすんねんコイツ!!




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