鳳梨挿話

湯島はじめ

鳳梨挿話


百枚のレースを編みし針の死よ

青嵐きて織りたての星条旗

サリンジャー抱きて抱かるる炎帝に

風死してスプーンばかり光る夕餉

鳥はあらねど鳥籠を箱庭に

ハンカチを夜な夜なとばす窓が欲し

氷水舌はことばの夢を見る

かつて繭生まれし国にかかわらず

空想の盟友半夏生に死す

銃よりも日傘は優しされど鋭し

聖人の指はつめたし夏野ゆく

あなたから香る鳳梨の危うさよ

西日射し影は生者のうえに落つ

夜店にはいのちもあれどみな幽か

ナイターにて敗け投手の虹彩の青

麦酒越しの世界あかるしすこし眺む

不老不死ゆめみしひともいずれ枇杷

このごろは夜釣の舟に焦がれたり

口約束ではなく天使魚をください

花ダチュラいつか覚らんおばけの名



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

鳳梨挿話 湯島はじめ @hajime_yu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ