第15話 ヒロイン指南
「思い出しましたわ!」
課外学習イベントでは、魔物討伐後の後夜祭で、とても素晴らしいスチルが! ってお兄様は、なんでいらっしゃらないのかしら?
逆ハールートとお兄様ルートでは、異学年のお兄様も課外学習の監督役として参加するはずが……今年は見たことのない方が監督役としていらっしゃいます。
「ルチア様。逆ハールートなら、監督役にお兄様が……」
「なに?」
「な、なんでもありませんわ!」
頬擦りしそうな勢いで、魔物肉を解体なさっているルチア様に、わたくしは後退りして逃げ出しました。そんなルチア様に必死に話しかけていらっしゃるマサットウ公爵令息という攻略対象者+逆ハー要因と思われる生徒たち。
逃げるが勝ちですわ!
それからと言うもの、学園を抜け出したルチア様が獲物を見せにきてくれるようになりましたわ。
「みて、悪役令嬢。獲れた」
「また虫型の魔物を捕まえられたの? 仕方ないですわね。わたくしが、獣型の魔物を差し上げるから……」
「いや。これ、私の獲物」
そう言って、魔物の死骸を咥えて……間違えました、幻想が見えましたわ。魔物の死骸を抱えて去っていく聖女ルチア様。いつもその数十分後にマサットウ公爵令息がルチア様を見かけたか、聞きにいらっしゃいます。
ルチア様は攻略対象の好感度を上げずになにをなさっているのかしら? そう思って聞いてみましたわ。
「ねぇ、ルチア様?」
「呼んだ? 悪役令嬢」
壁の向こうからぴょいっと現れたルチア様。逃げたふりしてアイテムボックスに隠していたようです。
「ルチア様は、攻略対象者であられるマサットウ公爵令息たちの好感度UPはなさらないんですの?」
「こうかんど……?」
まるで初めて聞いたと言わんばかりのセリフに、わたくしは頭を抱えます。
「好感度を上げないと、逆ハーエンドはできませんわよ? もっとオーバーなくらい愛情表現なさったら?」
「それは困る」
「そもそも、なんでルチア様はそんなにも逆ハーエンドにこだわっていらっしゃるのかしら? 殿下ルートでも幸せになれますわよ?」
どのルートを選んでもヒロインは幸せになれるのが乙女ゲームの特徴ですわ。紳士的な殿下と結ばれるのは、間違いなくハッピーエンドですわ。
「……逆ハールートが一番幸せになれるって言ってたから」
「あぁ、プレイなさってたご家族の方がそうおっしゃっていらしたのね?」
「うん」
頷いたルチア様は無垢な瞳をしていらしたわ。
「逆ハールートだと、攻略対象者の皆様にちやほやしてもらえますわ。でも、1人の方に愛されるということも幸せでしてよ?」
「……あいされる?」
「愛される観念が難しかったのかしら? うーん、そうね。一緒に幸せに暮らしていける、ならば、わかるでしょうか?」
「……叩かない?」
「誰も決してあなたを傷つけさせませんわ」
「私、悪役令嬢ルートにする」
「え?」
「一番食べ物くれる」
「ち、違いますわ! ルチア様!?」
わたくしが困惑している間に、ふわりと立ち去ったルチア様。ルチア様のいらした場所には、虫型の魔物の死骸が少しだけ置いてありました。
「ってルチア様!? 獲物をくださるの!? わたくし、虫型の魔物の死骸は、要りませんわ!??」
ルチア様は本当に猫のようなお方ですわ。仕方なく、虫型の魔物の死骸を回収して、ばあやのアイテムボックスにしまってもらいます。後日欲しがるのでしょうから。
「虫型の魔物の死骸といえば……次のイベントには、どんな魔物が出てくるのかしら? まさか、虫型の魔物ではないわよね?」
学園祭に乱入するミノタウロスの群れ。それがゲームでのストーリーでしたが、お兄様とばあやが魔物を倒しすぎてしまいましたわ。
「ナリアンヌ嬢。君もたくさん魔物を倒しているからね?」
いつからか後ろに立っていた殿下が、わたくしにそう話しかけます。本当にこの方は、まるで心が読めるようですわ。
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