第14話 魔物襲撃

「た、た、大変ですー!」


 伝令の方の叫び声でその場はパニックに陥りました。


「魔物が出ました! 魔物が!」


 わたくしは、緊張しながら話の続きを聞きます。オークは増えているのでしょうか?


「お、オークが5体も現れました!」


 オークの繁殖力って思ったよりか弱いのね? びっくりしてしまいましたわ。


「なんと! オークが5体も!?」


「最近は人の姿を見ると怯えて逃げて行くから、森の奥に散らばって隠れていると噂されていたのに!」


「そんなオークがなぜ集団で現れているのだ!」



 騒ぎになっておりますが、きっとこれは強制力。そして、聖女への招集が……。


「な、ナリアンヌ様」


「まぁ、マルチダ様」


 テラ子爵のご令嬢であるマルチダ様が、勇気を出したようにこちらは近寄ってきます。


「我々をお守りいただけないでしょうか? いつものように」


「……えぇ、わかったわ」


 あれ? 聖女ルチア様ではなく、わたくしに期待の視線が一身に集まってきておりますわ。


「ナリアンヌ嬢。戦力になるかわからないけど、同行するよ」


「悪役令嬢。一緒に狩る」


 殿下とルチア様が参戦を表明します。オーク5体程度に、戦力過剰ではないでしょうか?


「……私の知力が必要になるかもしれないからね。聖女のために参戦するよ。勘違いするなよ? ハーマート公爵令嬢」


 不遜な態度でわたくしに話しかけて参加表明をするのは、マサットウ公爵令息ですわ。安心しましたわ。


「まぁ! マサットウ公爵令息が参加してくださるなら、か弱いあなた様をお守りするために戦力が避けますわ!」


 オーバーキルを避けることができた喜びで、マサットウ公爵令息の元に駆け寄ってしまいました。


「ひっ!?」


 そんなわたくしが、何か別のものに見えたのか、マサットウ公爵令息は震え上がっていらっしゃいます。


「マサットウ公爵令息。僕たちの足を引っ張らないように、ね?」


「……いらない」


 殿下とルチア様がそれぞれそんな呟きをマサットウ公爵令息へ向けて落としました。思わず同情してしまいそうになりましたが、それどころではありません。ルチア様の食糧確保に向かいますわ!






 ……やることなさすぎましたわ。


 わたくしが、3匹倒している間に確実1匹ずつ仕留められました。ルチア様は、嬉々として攻略対象に獲物を見せつけて、あまりのグロさに卒倒させています。


 わたくしは、攻略対象者に見せつけ終わった獲物をさらに見せつけられております。わたくしが倒したオークもルチア様に渡すと、喜んでアイテムボックスにお仕舞いになられました。



 ……なんというか、全体的に被害がなくていいことではあるのですが、物足りない感じになっておりますわ。やはり、兄上の戦力が過剰に育ちすぎたことと、ばあやが健在なことがストーリーに影響を及ぼしているのかしら?

 そう思いながら、小首を傾げていると、わたくしの肩に手を置いた殿下が言いました。


「ナリアンヌ嬢のおかげでもあるよ……。無事、討伐できたのは、ね?」


「お嬢様はそろそろ褒賞を受け取らないといけませんわ!」


 大騒ぎしているばあやを落ち着かせて、首を傾げます。何か忘れているような?

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