第15話 彼の真意を聞くために。


「姫様! 本当にお綺麗です!!」


「本当にご立派になられて……」


ドレスアップしたモアナを見て、

ジャンヌとアンヌが言葉をかける。


「ジャンヌ。あなたのおかげよ。それと、アンヌ。その言い方だと、あたしが今日結婚するみたいに聞こえるじゃない。嫌だ、縁起でもない」


「結婚は縁起があることのように思いますが?」


「母さん、モアナ様は婚約されるのよ。ちょっと気が早いわ」


「いや、どっちもしないから」


アンヌとジャンヌの掛け合いを聞いて、

モアナはため息をつきそうになる。



指輪に関しての良い案も思い浮かばず、

とりあえずアルブス王国王太子に夜会前の直談判をするしかない。


父王の言う通りにするのは

本当に本当に癪でしかない。





「とりあえず、会場につく前に王太子殿下に会わないと」


「そうですね! とりあえず、指輪は後で探しますってことにしてもらいましょう」


「違うわよ! 婚約自体無かったことにしてもらえば指輪のことは言わなくていいでしょ?」


「それも、そう……ですか?」


「そうよ」


(それより、あの・・指輪の真意が知りたい)


さすがに

今日の今日まで軟禁されることはないらしい。


自室を出ると

いつもその場に居座っていた兵士たちの姿が見えない。



モアナは

アンヌたちに適当なことを言いくるめ、


自室を出て

貴賓室となっている一階に降りることにした。



モアナがいる東棟はお客様専用の棟であり、

一階部分は完全に貴賓専用になっている。


招かれる貴賓のほとんどが

中央部一階のダンスホールで主催される夜会の参加者。


移動も考えて

一階に貴賓室が用意されることはごく一般的なことなのだ。



さて、


モアナが貴賓室へと向かう途中、ふと中央の中庭が目に入った。



ウィリディス王国の王城は

中央のモスクを模した部分が一番奥になっており、


その東西に

前へ突き出すように棟が何棟か経っている。


突き出している棟と棟が連なっているから、

手前の棟から中央部までの間に空間が出来る。


そこを

庭として手入れしているために、


ウィリディスの中央庭園は

王城を訪れた人々の心を慰めるためか、王の見栄のためか

噴水を至るところに設置した豪華なものになっている。



そして、


その庭園の噴水の側に

誰かが佇んでいる姿がモアナの目に飛び込んでいた。


噴水の水が反射して

何かがキラッと光った気がしたのだ。



だが、


その光は噴水ではなく、おそらくは彼の髪色のせい。


黒髪や茶髪が主流のこの大陸において

あまり見かけない銀髪。



彼を見て、

モアナは急いで中央庭園へと向かった。

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