侍女親子のつぶやき。
「ものすごい勢いで出ていかれたわね」
とジャンヌ。
「モアナ様の行動力は凄まじいもの」
とアンヌ。
モアナは
基本的に頭の回転が早い。
そして、
それに伴う行動力たるや、他の比ではない。
「男であったなら、とそう陰口を叩くものもいたけれど。王子であったなら、そのカリスマ性で多くの者を魅了したでしょうね」
「……母さん。まぁ、モアナ様は王女というか、女性らしい受け身の姿勢より、男性らしい攻めの姿勢が似合うわよね」
実母である前正妃が亡くなって、
継母である現正妃に迫害されるようになってから、
モアナは
決して心折れることなくその迫害を跳ね除けてきた。
姉のドゥーナが王政を支える傍らで、
モアナは自分たちの経済基盤を築くべく、市井へと足繁く通った。
現正妃が
王にモアナたちへ資金を渡さず、護衛や侍女を減らし、彼女たちを支援しようとする貴族たちを牽制したからだ。
食べるものに困るまでは行かないにしても、本当に最低限の衣食住。
これでは
いつか立ち行かなくなるときが来る。
そう思ったモアナは
市井へ出て、王都や他国から出稼ぎに来ている商人たちへと交流し、
情報を交換する傍らで、
森林を資源に商売を始め出した。
始めは小規模であったものを
他国を回って様々な人を巻き込み、確かな人脈を作って、今は十分な資金を循環させるまでに至っている。
それを
ドゥーナの指導の元に王国内で困っている人々への支援金にしたり、
自分たちの活動資金にしたり、アンヌやジャンヌ、その他少ない彼女たちの味方である侍女や護衛、下働きの給金に充てたりしているのだ。
「モアナ様がいなかったら、私たち親子は飢え死にしてたわよね」
「そうね。他の人たちも、どれだけモアナ様たちの側で支えたくとも、お給金を止められたらさすがに暮らしていけなかったもの」
現正妃は
最低限の衣食住を与えて苦しめようとしたモアナたちがケロッとしているのを見て、
今度は
彼女たちの周りの者の給金を払わなくしたのだ。
それも、
実際は払ったことにして現正妃の懐に入れているという狡猾さ。
そのことを知ったときのモアナは
烈火のごとく起こり、現正妃に抗議しようとした。
だが、
冷静なドゥーナがそれを止め、もしもの時のために不正の証拠を集めるに留めたのだ。
そして、
モアナとドゥーナは味方をしてくれる侍女や護衛、使用人たちへ集めた資金で給金を出すに至ったわけで。
その行動力がなければ、
とっくにアンヌやジャンヌたちのような周りの者、
いや、もっと言えば、
ウィリディスの王国民にももっと苦しい生活を強いていただろう。
「モアナ様ご本人だけが、ご自分の価値に気づかれていないようで、何だか歯がゆい気分ね」
「……そうね、母さん。……でも、願わくば、アルブスの王太子様がモアナ様を理解してくださる方だといいなって思うのよ」
ジャンヌの言葉にアンヌは彼女の手を握る。
実母が亡くなって以降、
戦い続けている彼女に安らげる場所がありますように。
ずっと側で見守ってきた彼女たちは、
心からそう願わずにはいられなかった。
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