第3話 なぜそんな話になったのか。

そんなモアナに、

何故か最も関わり合いになりたくない王国から結婚の打診があった。


大陸に現存する王国の中で、

空島そらじまの中央に位置し、


すべての王国の仲裁を担う役割を与えられている

アルブス王国。


それだけなら

この空島に存在する中で中立を守ることを義務とされた王国というだけで、モアナが特別拒否反応を起こすはずはない。


ただ、


何というか、中立、中立とは言いながらも、

この空島の中で一番発言権が高い謎多き王国でもある。


そして、


その王も何を考えているか分からない。


多国間の争いへの仲裁しにいけば、

何故か最終的にアルブスに有利に働いていく。



それが


後々になって分かるからこそ、

その場でそれを指摘することができないので、泣き寝入りするしかない。


それが計算なのか、偶然なのか。


ここ数年それが顕著であるので、

モアナとしては闇の巣窟のように思えてならない。



そんなかの王国が、

急に是非とも王太子妃にモアナを据えたいと言ってきたのだ。


最初、

何の冗談かと思った。


はっきり言って、

かのアルブス王国の王太子とまともに話した記憶がないのだ。


王国間の交流は王族としては必須で、

各王国主催のパーティに呼ばれたことはある。


あるにはあるが、

彼と接触したのは数えるばかり。


しかも、


形式的な挨拶を交わした後は、

父から壁の花になれと言わんばかりに追い払われ、


仕方なく

料理やデザートを食べまくった記憶しかない。


現正妃が流したであろう姉やモアナの醜聞は

他国にも届いているようで、


自国で開くパーティでも、

他国で開かれるパーティでも、


誰かに話しかけられた記憶はない。



本当にない。



もしかしたら、

酔った勢いでかの王太子と二言三言の会話があったか、

と思い返してみてみたものの、


そういえば、


まだお酒が飲める歳でなかったのを思い出し、

やはり接触の可能性は極めてゼロに近いと改めて思う。



では、

モアナの容姿はどうかと問われれば、

【可愛い】と言えなくもない。


たが、

一目惚れされるほどの魅力は控えめに言ってもない。



それは

別に自己評価が低い、ということではない。


波打つ黒髪と深淵のような黒い瞳。


これだけ言えば、

この空島では美人の代名詞ではあるのだが、


空島のほとんどが黒髪黒目か、

よくて茶色茶目だ。


色素が薄いこと自体が珍しく、

むしろ、美人の代名詞の色合いを持つ女性は

それこそ掃いて捨てるほどいる。


そして、

顔の配置が特別整って美しいか、愛らしいか

という点でいえば極めて普通である。


まぁ、

やはり【可愛い】という表現が一番しっくり来る。



ただ、

若干釣り目気味で在るのがコンプレックスでもあるのだが。


そして、


美人といえば、

モアナの姉の方が数倍顔が整っている。



……とすれば、

である。


なぜ、

かの王国から結婚の打診があったのか。


答えは1つしかない。




【年頃の王女がモアナ以外にいなかった】




という、消去法でしかなかった。



そして、

モアナにとっては迷惑以外の何物でもなかった。


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