第6話 修行終了
「私のことはいいから置いていってください。すぐに治って追いつきますよ」
(あー、やっぱりか)
アリスは今ここで死亡フラグを回収しにきた。
ここで放置していけばアリスがやばいことになるなんてすぐに分かった。
というより前々からおかしいと思ってたんだよなぁ。
この山に入るとアリスって顔色悪くなるから。
でも、この子は俺に修行を中断してほしくないらしくて認めることはなかった
俺もこの現象に関してはもちろん調べた。
どうやらこの世界には土地との相性があるらしいということ。
アリスはこの山と相性が悪いんだろう。
この相性問題だけど引き起こしているのは土地の主ということが多いらしい。
この山で言うとこの山のボス。
この相性問題はボスを倒せば解決することが多いらしい。
だけど、ボスを倒すまでは悪影響を受けるので、保険としてこの山に入る時大量のアイテムを持ち込んでいた。
どうやらこれが正解だったな。
(体力が徐々に削れてるようだ。しかし、削れるよりもハイペースで回復アイテムを使えば問題はない)
大量に持ち込んだ回復アイテムを惜しみなくアリスに使う。
回復アイテムの出所だが、父さんに念のため回復アイテムがたくさんほしいと言えば、お金もいっぱいくれるのでこういう物量作戦も可能だ。
「大丈夫か?」
「ちゅきっ」
さっきからこんなよくわからない言葉を繰り返すだけだ。
うん、大丈夫じゃないかもしれない。
迅速にボスを倒して家に戻ろうと思う。
ちなみにだが山頂はすぐそこだ。
しかし、念のため帰るか?って聞いてみようか
「帰るか?さすがにアリスの体調も心配だ」
「だめです。やり遂げてください。私は死んだとしてもあなた様のいいところを見たいのです」
どうやら、俺以上に帰るという選択肢はないようだ。
もちろん、死なれては困るので回復アイテムを常にドバドバに使いながら進む。
やがて、山頂に到着。
少し開けたような場所だった。視界がいい。木々は存在しない。
俺の視線の先にはガイコツ剣士が立っていた。
これは比喩でもなんでもなく見たまんまである。
名前:スケルトンナイト
レベル:85
称号:山の主
という表記が出てきた。
「こいつを倒せばアリスの体調も元に戻るって訳か」
俺はスケルトンナイトに向かって走っていった。
「【スラッシュ】」
剣を一振。
それだけでスケルトンナイトは特に抵抗することもなく、切り裂かれて消えていった。
「あれ?もう終わり?呆気なかったな」
ボスって言うくらいだからもう少し手間取ると思ったんだけど……。
「まぁ、レベル差を考えたらこんなもんか。俺の今のレベル800くらいあるしな」
さぁ、家の方に帰ろう。
アリスのことも心配だしな。
◇
家に帰ってきた俺はアリスと軽く話をすることにした。
「大丈夫?」
「ちゅきっ」
「しばらく休んだ方がいいかもな」
俺は自分のベッドをアリスに貸すことにした。
今までずっと仕事ばかりで疲れも溜まっていのかもしれないし。これを機に少しでもいいから休んでもらおう。
「でもお仕事はどうすれば?」
「大丈夫だって。俺がなんとかしとくからアリスは休んでて」
「ちゅきっ」
アリスは俺の布団の中で寝息を立て始めた。
これでとりあえずアリスが死ぬようなことは無くなるだろう。
さて、次は。
(ミーシャの寝盗られだよなぁ)
このまま順当にいけば間違いなくミーシャは寝盗られるだろう。
それをなんとか阻止したいところではある。
脳を破壊されたくはないからねっ!
しかし、どうしたものか。
今の俺では学園には向かえないので学園でミーシャを守ることは出来ない。
どうにか学園に入学する方法を考えないといけない。
だけど一応これには策がある。
この一週間ほど俺は何もせずにいたわけではなく色々と調べごとをしていたりした。
その結果分かったことがいくつかある。
実はと言うと、学園の入学というのは正確にはまだ先の話らしい。
一応だが裏のルートを使えばまだ学園への入学は可能らしいのだ。(もちろん、裏のルートでも学園からの招待は必要)
その裏ルートを使えば俺が今から学園へ入学することも一応可能なはずなのだ。
だが、ここでひとつ大きな課題が発生する。
「どうやって学園からの招待を受けるか、だよな」
現状の俺はどこにでもいるようなモブのひとり。
学園には認知されていないはずだ。
(どうやって認知させるか……)
と考えた時に思い浮かぶことがあるとすれば……
「クズリスを相手に模擬戦などか?」
今の俺にはそれくらいの考えしか思い浮かばなかった。
だが、仮にクズリスを相手に無双すれば、学園側も俺の存在を認知するはず。
そして、招待をくれる可能性も出てくる。
◇
俺の修行が終わり、2日が経過した。
最初にクズリスがやってきた時からちょうど一週間が経過したことになる。
俺が部屋の中で読書していると、部屋の扉がノックされた。
コンコンコン。
「いるか?ゼクト」
「どうしたの?父さん」
要件はなんとなく分かっていた。
父さんが俺の部屋にくるときは、だいたい俺になにかをやって欲しいときだ。
それ以外のことで俺に干渉してくることはない。
そして、このタイミングで来るということは……
「客人が来た。出迎えてきてくれ」
(やはりあいつか)
どうやらクズリスが来たようだ。
父さんは相変わらずいろいろと仕事で忙しいらしいし、今回も俺が出迎えるしかないようだ。
重い腰を立ち上げて部屋を出た。
そして、この前も出迎えた場所まで向かう。
村の入口まで向かうと前回のように馬車が一台止まっている。
馬車の前で待っていると馬車の扉が開いた。
中から降りてきたのはやはりクズリスである。
「おはよう。ゼクトくん。一週間ぶりだね」
馬車の中から優雅に降りてくるクズリス。
俺と向き合った。
その顔には笑顔が浮かんでいる。
もちろん、好意的なものではなく、俺を小馬鹿にするようなそんな意味の笑顔。
「君の花嫁を正式に奪いに来たよ。さぁ、無様に泣き叫ぶ顔を見せてくれよ」
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