6.沈黙を破る声。
「………………」
「………………」
風呂場での一件から、しばらく経って。
俺と麗華はひとまず部屋に戻ったのだが、場には微妙な空気が漂っていた。霊体とはいえ、麗華は麗華なのだ。先ほどの光景が、目蓋の裏に焼き付いて離れない。そもそも霊体なのにどうして湯船に浸かっていたのか、という疑問もあるのだが、そこについては置いとくことにしよう。
「な、なぁ……麗華?」
「う……うん?」
「いや、やっぱりなんでもない……」
というか、忘れるようにしなければ耐えられなかった。
目の前にいる彼女も、一人の女の子であることに違いないという事実。しかし意識しないようにすればするほど、俺の頬は熱くなっていった。このような感覚は、幼少期に抱いた記憶がない。
むず痒い、というか。
あの頃になかったいじらしさ、というか。でも――。
「…………」
それは、実体の麗華にはない雰囲気だ。
比較するのも変な話だが、霊体の彼女のまとう雰囲気はどこか幼い。それこそ、まだ大人になり切れない、出会った頃のまま。
この差の正体は、いったい何だろう。
すぐ隣にいるはずなのに、直接触れ合うことはできない。そんなもどかしさから、俺はこのように口にしていた。
「麗華は、どうして霊体になって会いにくるんだ?」――と。
麗華が息を呑むのが分かる。
答えはない。そして、そのまま彼女はうつむいてしまった。
部屋の中はまた、どうしようもなく重い空気によって支配される。互いに何も口を利かず、刻一刻と時間が経過していった。
今日は、これで終わりか。
昼のこともあって、どうにかしなければと気は急いていた。
だけど言葉すら交わせないのであれば、解決なんて夢のまた夢だろう。心苦しいが、これ以上は無理強いをできない。
そう考えて、俺は――。
「きょ、今日はもう寝よう――」
「うえええええええええええええええええええええええい!!」
「…………え?」
早々に横になろう。
そう決めた瞬間だった。
耳馴染みのある声がして、アイツが飛び込んできたのは……。
――
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疎遠になった幼馴染みが、なぜか俺の部屋にいるのだが。~眠れる彼女の本当の声~ あざね @sennami0406
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