第3話「追放、そしてギルド」
大雅改めシルバ・ダイナソーは、冒険者のアシュレイに「その場所」に連れていかれるまでに、彼女から冒険者についての事を一通り聞かされた。
冒険者とは、昔は未知の迷宮を探索する者達を指す言葉だったが、今は迷宮探索だけでなく、薬草採取や捜し物の依頼、ポーションやエリクサーの調合に魔道具(アーティファクト)の生産、そしてモンスター退治などを一般人や商人、果ては王宮から依頼される者達を指す言葉へと変化している。
この世界では魔法や呪術が存在し、それを行使する者や剣や槍、弓などの扱いに長けた者が冒険者を生業としている事が多い。
だが、4年前から始まった魔族の攻勢を機に冒険者への依頼の系統は変化を見せはじめた。
魔族を討伐して欲しい、魔族に拐われた冒険者仲間や家族を救出して欲しい、それらを殺した魔族への報復をして欲しい……。
多少の危険はあるとは言え、かつて若者達が謳歌していた楽しい冒険者活動は今では陰鬱なものに変化してしまっていた。
「魔族のせいで、個人で王宮兵士50人分の力を持つ私達冒険者は貴重な対魔族の戦力になった……と言えばいいのか、私達みたいな日銭稼ぎが生業の人間が魔族との戦いに駆り出されてしまっている……と言えばいいのか……。」
「そいつはひでぇな……益々魔族が許せねぇ。」
その場所へ向かう道中でアシュレイの冒険者の説明を聞いたシルバは、改めて魔族によってこの世界が驚異に晒されている事を実感する。
アシュレイは、冒険者の事は知らないのに魔族の事は「益々許せない」と、まるで多少は魔族の事を知っていたかのような口ぶりのシルバに疑問を問いかける。
「魔族の事は知ってたの?冒険者っていう、この世界では当たり前の存在を知らなかったのに?」
「え?あぁ……ちょっと耳貸してくれ。大声は出すなよ?」
シルバはどう説明すればいいのかと悩んだ結果、アシュレイに先程起こった出来事を話す事にした。
ゴニョゴニョゴニョゴニョ……
(え?貴方勇者召喚の儀式で召喚された異世界人なの?だけどヘマをやって王宮から逃げてきたって……!?)
(あぁ。追いかけられないように顔は……魔法で変化させてるけどな。)
(道理でさっきから街を巡回する王宮兵士が多い訳だよ……何やったの?)
(それが、俺の相棒がいきなり出てきちまって……それを国王陛下は魔族と勘違いして俺を始末しようとしてきたんだよ。)
シルバとアシュレイは王宮兵士に怪しまれないようにしつつコソコソと会話をする。
(貴方がもし召喚者だってバレたらさ、貴方と一緒にいる私も怪しまれないかな……。)
(そう思うなら俺とは縁を切った方がいい。そうするなら今のうちだぞ。)
「そこの2人!」
「え?」
その時、王宮兵士の1人がシルバとアシュレイに声をかけてきた。
それにビクッとするシルバとアシュレイ。
「この街に魔族使いの男が潜んでいるのですが……心当たりはありませんか?」
(どうすんだよこれ……!)
(私に任せて。)
アシュレイはシルバとアイコンタクトを交わし、今はとりあえずシルバを守る為に演技をして見逃してもらう事にした。
「そんな人がいるなんて恐ろしいですね。魔族を使役する人間なんておっかないです……早く捕まえてくださいね!応援してます!」
「お心遣い感謝いたします。」
「じゃあ私達これから行く所があるので!行こうシルバくん!」
「お……あぁ!」
アシュレイはなんとか王宮兵士を撒いてその場から退散した。
王宮兵士はシルバが腕に巻いていたシャインチェンジャーを見て「あの腕輪、どこかで……」と思うも、思い過ごしだと言って街の巡回を再開した。
(ふぅ……バレなくて良かったぜ。庇ってくれてありがとよ。)
(ていうかその腕輪マズくない?その足袋に入れといた方がいいわよ。あともうすぐ到着するから。)
(あぁ。)
アシュレイにシャインチェンジャーを外すよう言われたシルバはシャインチェンジャーを外して、ダイナセーバーの隊服が入っている袋にそれを入れる。
それから少し歩いた所に、アシュレイがシルバを連れてきたかった場所があり、2人はそこに到着した。
「ここか?」
「ええ。ここは冒険者ギルド。冒険者達へ依頼するクエストは全部ここで請け負っているの。」
「なるほどな。」
大きな建物、ギルドの前でそう話すシルバとアシュレイだったが、その時シャインザウルスのダイナミックカードがカードホルダーから飛び出してきてギルドがどんな所なのかと見てみようとした。
「どんな所なんだYO!ミーにも見せて欲しいYO!」
「別に大きいだけで普通の建物だよ。」
「そのカード、自分の意思を持っているの?益々興味深いわね。どういう原理なのかしら……魔法?それとも別の技術?」
「多分魔法みたいなもんじゃねーの?」
「そのカードがとても気になる所だけど、とにかく中に入るわよ。」
「あぁ。」
「レッツシャインだYO!」
そうして2人と1匹はギルドの中へと入っていった。
建物の大きさからして中はかなり広いんだろう、というシルバの予想は当たり、中にはたくさんの冒険者達がいて、昼間なのに酒を飲んでる冒険者やカウンターでクエストの受注をしている冒険者など、様々な冒険者達がそこにはいたのだった。
「貴方、お金を稼ぎたいって言ってたわよね?なら早速冒険者登録をしてクエストを受注しましょう。」
「そうだな。」
アシュレイはシルバの「お金を稼ぎたい」という目的を再確認した後、彼を冒険者登録をする為のカウンターへと連れていく。
「冒険者登録ですか?」
「ええ。彼のね。」
「よろしくな、姉ちゃん!」
シルバは受付の女性と軽く挨拶を交わし、女性は手のひらサイズの水晶を取り出してシルバにそれに触れるよう促す。
「これに触れると貴方に適した冒険者としての活動スタイルが写し出されます。剣術、槍術、弓術、格闘、魔法、どれが得意なのかを判明させる事で冒険者活動を快活にできるのです。」
「なるほどね。これでいいのか?」
シルバは受付の女性が言った通りに水晶に手を置いた。
そして水晶に写し出された、シルバに最適の冒険者としての活動スタイルは……。
「戦隊……?」
「は?」
「こんな事今まで有り得ませんでした……ただ一言……「戦隊」……と。」
予想だにしなかった事に困惑する受付の女性と、それを聞いて自分も困惑するアシュレイ。
「そうだ!俺様は古代戦隊ダイナセーバーの6人目の戦士!ダイナシルバーだからな!」
「いよっ!シャインシャインに輝いてるYO!」
そこで戦隊だった頃を思い出し、自らの正体を派手に明かすシルバと、彼の周りを浮遊しながら彼を賛美するシャインザウルス。
「え……?」
当然、その場の皆が困惑した。
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