第2話「転生、そして追放」

大雅は自分が召喚されたこの世界についての国王アイザックの説明をざっくりとだが理解した。


この王国「アスタロス」は大陸で最も人や技術が栄えている王国なのだが、4年前突如として現れた「魔王」によってこの国は攻撃の標的とされ、数多の魔族による攻撃がこの国全土に仕掛けられ、壊滅状態に追いやられた街や村もあるらしい。

さらに2年前から他の国への攻撃も始まり、魔族の侵略行為はこの大陸全土に広がってしまった。


1個体が並の兵士100人分の戦力を持つとされる魔族相手に、正攻法では太刀打ちできないと判断した国王アイザックは、ついに「異世界からの勇者召喚」を決意する。

異世界から現れる召喚者は特別な才能と力を持っている事が王家に代々伝わる古文書には記されており、それが本当の事だろうとまやかしだろうと、それに頼るしかなかったのだ。


「……これがこの国の現状と君を召喚した理由だ。」


「……なんとなく理解できたぜ。俺様にその「特別な力」を求めてる訳だな?」


国王アイザックの説明を聞いた大雅の質問に、彼は「そうだ」と首を縦に振る。


「貴方が腕に付けている、特別な力を秘めたそのアーティファクトがその特別な力なのだと思います。」


王女のステアは大雅の腕に巻かれているシャインチェンジャーを見てそう言う。


「なるほどね……いいぜ!俺様がお前達の力になってやる!」


大雅は楽観的な考えをしており、魔族が何なのか、なぜ魔族が攻めてくるのかは分からないがとにかくこの国を守る為に戦う事を国王に宣言した。

だがその直後……。


[シャインゴー!シャインゴー!]


「あっ!今はダメだ__」


突如シャインチェンジャーから鳴る音声に焦る大雅。

一体どうしたのかと周りの人達は考えるが、次の瞬間天井から「それ」が降ってきた。


「シャイ〜ンザウル〜ス〜!」


「シャインザウルス!こんな狭い所で出てくるなよ!」


「ごめんよ〜!でもカードの中は窮屈でよ〜!つい出てきちゃったYO!」


「お前な〜……。」


そこに現れたのは大雅の相棒のダイナゴン、銀色の装甲を身に纏うシャインザウルスだった。

ダイナセーバーとして活躍していた頃からずっと一緒にいた大雅にとっては良き相棒のシャインザウルスだったが、そこは国王の宮殿……彼らは大雅とは違いシャインザウルスを敵と勘違いした。


「うわ〜!!なんだいきなり!!」


「どこから現れたんだ!?」


「そんな事よりも……こいつ魔族じゃないのか!?」


突然現れたシャインザウルスに対して慌てふためく兵士達と国王達。

大雅は彼らを誤解させてしまったのではないかと思いすぐに誤解を解く為の説明をしようとするが……


「ま、待ってくれ!コイツは悪いやつじゃねぇんだ!」


「問答無用!その魔族使いの男を捕まえよ!」


国王は即座に兵士達に命令を下し、兵士達は槍を構えて大雅とシャインザウルスを取り囲む。


「ま……マジかよオイ……!」


あの世界では……ダイナセーバーとして活躍していたあの世界では彼は確かにヒーローだった。

子供も大人も皆が自分を応援してくれた。

それがこの世界では……自分を応援してくれた彼らと同じ人間が自分に槍を向けている。


(……こうなりゃ……ここは一旦逃げるしかねぇ!)


「モクモクドン!」


[モクモクドン!レディゴー!]


大雅は即座にダイナミックカードをスキャンして自身を煙幕で覆い、それに乗じて宮殿から脱出した。

煙幕を発生させるダイナゴン、モクモクドンの力を宿したカードはこういう時に役立つのだ。


「ふぅ……!ひでぇ目にあったぜ……!さて……。」


街に出た大雅は、宮殿追っ手に捕まらないようにそこら辺の人間の顔を見て、自分の顔をその顔に変化させる。


「これで良いか。」


彼の顔は異世界人Aの顔と全く同じに変化した。

なぜ彼にそんな事ができるのか、それは後々分かるだろう。


「服は……これお気に入りなんだけどなぁ……せっかく天弧がくれたダイナセーバーの証だからよ……。」


彼は服も買い換えるかどうかも考えるが、このシルバーの隊服……ダイナセーバーの証を自分にくれたダイナレッド、十文寺天弧(じゅうもんじてんこ)の事を頭に浮かべる。


「捨てる訳にはいかねぇよな……。」


大雅はそう決意して、服屋で新しい服を買いこそすれど隊服は捨てずにいる事を決めた。

せめて自分がダイナシルバーであるという証を捨てない為に胸に銀色の龍のバッヂの付いた服を選び、一緒に買った足袋に隊服を入れて持ち運ぶ。


「これで良いか……しばらく出てくるのはお預けだぞ、シャインザウルス。」


「それはノーシャイン〜。」


カードホルダーからシャインザウルスのカードを取りだしてそう言いつける大雅。

そんな彼のカードを突然何者かがパッと横取りした。


「あっ!?」


「何これ?カード?こんな魔道具見た事ないわ……?」


「アンタ誰だ?あとそれ返せ。」


大雅の目の前に現れたのは、長い木の杖を持った、青い髪と朱色の瞳が特徴の女性だ。


「私はアシュレイ。アシュレイ・ストラテスよ。貴方面白いもの持ってるわね。腕のそれも面白そう。名前は?」


アシュレイと名乗った女性は大雅にカードを返しながら名前を聞き直し、彼は素直に自分の名前を名乗ろうとしたが、自分は国王に目を付けられていた事を思い出し偽名を名乗った。


「白亜……いや、シルバ・ダイナソーだ。よろしくな。(まぁ、今更別の名前が1つや2つ増えたっていいか。)」


「顔はよく見るタイプだけど……貴方が持ってるそのアーティファクトは初めて見るわ。私貴方に興味持っちゃった。」


「は?何言ってんだ?」


突然自分に興味を持ったと言い出すアシュレイに困惑するシルバ。

だが逆にこれはチャンスだとも思った。

何せ彼はこの世界のお金を持っておらず、魔族と戦うにしろ違う生き方をするにしろお金が無ければ何もできないと思ったのだ。

シルバは早速アシュレイにこう聞いた。


「なぁ、手っ取り早くお金を稼げる方法って無いか?ちょっと食い扶持に困っててよぉ。」


「ならそのアーティファクトを売ればいいんじゃな__」


「ダメに決まってるだろ!」


アシュレイの提案を聞いたシルバはつい大きな声を出してしまった。

そしてお互いに悪かったと謝罪する。


「ごめん……そんな大切なものだったのね。」


「俺こそ悪かった……急に大きな声出して。」


「じゃあ冒険者でもやったら?」


アシュレイは今度はちゃんとした答えを大雅に返した。

それを聞いた彼は「冒険者」という言葉に興味を惹かれる。


「冒険者……って何だ?」


「冒険者を知らないの?じゃあ教えてあげるからついて来て!私直々に教えてあげるから!」


大雅の質問にそう返したアシュレイは彼の手を引きある場所へと向かう。

大雅は、一体どこに行くのだと思いながらアシュレイに手を引かれ、その場所へと向かった……。



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