第6話 如月由芽と同好会活動
「と、いうわけで。わたしの幼馴染の、葛城かなみちゃんです。かなみちゃん、こちらが先輩の柊彩香さん」
「よろしくです、柊さん!」
「よろしく~!いやぁ、新入部員が入ってくれるなんて!私は嬉しいよ~!」
昨日のかなみちゃんに言われた通り、放課後にかなみちゃんを連れて演劇同好会の部室へと足を運んだ。
うんうん、2人の第一印象は悪くなさそう!2人ともコミュニケーション能力は高い方だし、わたしの見立てでは相性は悪くないでしょ!
「とりあえず、あたしは仮って感じで!由芽の付き添いというか、そんな感じなんで!」
「え~、そっかぁ残念……。そういえば、葛城ちゃんは由芽ちゃんの幼馴染なんだよね!てことは、中学も一緒だよね!もしかして、演技経験者!?」
「そうですよ~。でも、あたしは由芽ほど上手じゃないです!なんで、基本は裏方でやってましたね~」
わたしを介さなくてもすぐに楽しそうに話せてるし、昨日のかなみちゃんに感じた違和感は杞憂だったかな。それじゃ、わたしはやるべきことをやろうかね!
「さ、今日も活動開始ですよ!柊先輩は体育着に着替えてるからいいとして、どうする?かなみちゃんも一緒にやる?」
「んー、折角だししようかな!久しぶりに、由芽と運動してみたいし!頑張りましょうね柊さん、由芽の指導はスパルタですよ~」
「しょ、初心者ながら頑張るよ!」
むむ、そんなにスパルタだったかなわたし?
中学の演劇部で座長をしてた時は、結構わたしの練習メニューの評判良かったと思うんだけどなぁ。わたし自身スパルタなのは小学生の時の演技の先生で懲りてるし、緩く活動する方が好きなんだけど。
とりあえず、体操服に着替えて──
「わー!ストップ由芽!」
「うわぁ!?な、なに!?何があったの!?」
びっっっくりした!?かなみちゃんに呼び止められて、中途半端な状態で服を脱ぐのを止まってしまった。
「軽率に人前で脱いだらダメって、今日の体育でも言ったじゃん!」
「ええ………。その時にも言ったけど、同性しかいないじゃんか」
「はぁ~……。どう思います、柊さん?」
「由芽ちゃんは、もっと自分の事に目を向けるべきだと思うよ!!」
そ、そう言われるとわたしが悪い気もしてくるけど、わたしただ着替えようとしただけだよね?あれ、わたしが悪い要素ないよね?
そんな抗議の目線を2人に向けると、柊先輩は顔を真っ赤にして目を伏せてて。かなみちゃんはいつの間にか早着替えを終わらせて、真っ赤な顔でわたしにこう言った。
「由芽って、あたしに守ってもらってる自覚ないでしょ~」
確かに、かなみちゃんに守られているかもしれないけどさぁ……。男子とかナンパとかからわたしを守ってくれてるけどさぁ……。
「………別に、頼んでないもん」
結局何の反論も出なかったわたしは、そんな負け惜しみを残すしかできなかったのでした。
△
体操服に着替えてから、わたし達は一通りのメニューをこなしていった。
まずは、教室で入念にストレッチ。学校の周りでランニングを30分ほどしてから、時間を少しおいて早口言葉にあえいうえおあおの発声練習。発声練習はできれば校門でしたかったけど、どうやら同好会じゃあんまり出来ないらしい。本当は筋トレもしたかったけど、初日だしね。
とはいえ、そうやって演技をする為の身体を鍛えるのは大事だ。活舌も、演技をするならば最重要事項の1つ。だからこそ、この二つの基礎は毎日やらないと。
「つ、つかれる……!」
「ゆ、由芽って、ホントに体力馬鹿だよね……!」
部室に帰って来て10分くらい、柊先輩とかなみちゃんはそう言いながらマットの上で横たわっていた。
ちなみに3つ持ってきたストレッチ用のマット、わたしの私物なんだけどなぁ。家にもう1つあるからいいけど、なんとも言えない気持ちになるなぁ。部員が増えるなら、先生とか他の部活の人に交渉してみようかな?
「演技をするのに、体力は絶対条件だよ~?舞台に立ったら、想像の5倍は体力を消費するものだと思っておかなきゃ」
これもわたしの先生の受け売りなんだけどね。初めての公演は、それはもうゼーハー言いながらなんとか終えたっけ。ふふっ、少し懐かしいなぁ。
「それに今日の朝、担任の先生に聞きました。顧問のいない同好会だと、基本は5時30分までしか活動できないんですよね?時間は有限なんですから、詰め詰めでいかないと」
「わ、私より部長してる~……」
「小学生の時から舞台の座長してたから、由芽ってそういうところはしっかりしてるんですよ……」
プロを目指していないわたしやかなみちゃんはともかく、柊先輩は演技関係で将来ご飯を食べていきたいというし。それなら、もう少しハードな方がいいんだけど……。
まぁ、それも違うかな。最初はまず、演技をより好きになって貰わなくちゃ。その為にも、日々の自分の進歩は感じて貰わないと。
「さ、先輩、昨日のエチュードの続き始めましょう。ごめんかなみちゃん、タイマーで10分計ってほしい!」
「い、一応イメージは固まってるけど、昨日と変わってるかなぁ……」
「大丈夫です。とりあえず今日は、“演技に感情を乗せる”を目標にしましょう!」
「が、頑張るね!」
そうやって、わたしと柊先輩は昨日と同じ場所に立つ。かなみちゃんは後ろの机に座って、タイマーの準備をしてくれた。
「そんじゃ行くよー。よーい、スタート!」
その掛け声と共に、わたしはわたしを俯瞰する。
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