第16話 出会いを大事に
そんな馬鹿な!この作品に俺と同年代の可愛い女の子が登場するなんて!……念のために言っておくが、ズエッタさんは既婚者である。
「よお、グラウカ。今日は稼げたか?」
グラウカ……だと!?
「ふっふん、バッチリですよ!わぁ、リエットだ!私の好物なんですよぉー!」
「おぉ、こいつはグラウカの地方の食い物だったか。」
「はい!結構家庭的な料理で………あ、こちらの方は?」
「ん?あぁソイツはアズミ。お前の……一応先輩ではあるな。」
「てことは冒険者なんですか?
初めまして、私はグラウカと言って、Eランクの冒険者になって一週間の新人です。」
「俺はアズミだ。それよりもグラウカ………」
「は、はい?なんでしょうか?」
「良い名前だな。」
俺はグラウカの手を取る。
「えぇ!?」
「ア、アズミが口説いてる………!」
「えぇぇぇぇ!?私口説かれてるんですか!?」
「おい、アズミ。新人に早々唾をつけるなよ。」
ミネネさんが妙に嬉しそうに俺の肩に手を置く。
「はぁ?俺は口説いた覚えはないぞ?」
「「え?」」
「グラウカ……とても良い響きだ…………!」
「お前……ひょっとして…………」
「?」
ミネネさんはなんとなく察したか?
「フェスツカ・グラウカ………シルバーリーフが特徴のイネ科の植物さ。それと同じ名を持ってるなんて、君の両親はとてもセンスがあるな……!」
ここまで言ってはいるが、俺でもグリーンは判別が苦手だ。いつかは全ての植物の知識をこの頭に納めたいものだ。
「ハァー………グラウカ、こんな奴だが悪い奴じゃないんだ。ただ、ちょっとな………」
「あはは……アズミさん。折角ですしご一緒に食べてもよろしいですか?」
「ん?まぁ良いぞ。」
「では隣失礼しますね。」
「グラウカは今どんな依頼を主に受けてるんだ?」
「そうですね……基本は採取や雑用なんですが、仲の良い方達について行かせて貰っていて、ランクが上がれば仲間にしてくれると言われています。」
グラウカが食器を置いて嬉しそうに話す。
「へぇ?騙されてない?」
「そんなことないですよ!皆さん良い人たちです!」
「なんて名前だい?」
俺はこれでも眼光の一員。有名なギルドとして後輩を導かなくては。
「えっと、曇天って名前でした!」
………おっと。ビッグネームが出てしまったな。フランチェスカより強いランクAの冒険者じゃないですかやだー。
ちなみに俺達眼光はランクBである。なぜそんな俺達が英雄として目立っているのかというと、曇天のしくじりを隠すためでもある。龍種の仲間意識の高さを知っておきながら、死体を処分しなかった彼らは非難の対象になる可能性が高い。だから俺達に光になってもらい、隠しているというわけだ。
まぁこれは、管理所からの配慮のような気がするがな。
「そっか………まぁ有名だし心配はないか。」
「はい。受付の方にも良いと思うと言われました。」
「そうだね。」
「そう言えば、アズミさんはどんな風に戦うんですか?是非知りたいです!」
「俺は回復魔法とちょっとした水魔法だよ。後は剣も一応持ってるよ。あんま使わないけど。」
そういえばこの剣、ダリアの時以外に使ったっけ?
…………いや、考えるのは辞めとくか。
「えぇ!?回復魔法が使えるんですか!?も、もしかしてお貴族様!?」
「いやち…」
「おいおいグラウカ。これが貴族ゥ?ないない。」
ミネネさんが笑いながら手を振る。
「お前ちょっと失礼じゃないか?」
「ハッ!」
ウゼェ………
「まぁ、貴族ではないよ。回復魔法を習得できる機会がたまたまあったんだ。」
「へぇ~羨ましいです!」
「そうかな?」
「はい!傷を自分で癒せるなんてすごいじゃないですか!」
「まぁ…そうかも?」
あんなスパルタ、二度とゴメンだがな。グラウカがそれを体験することは限りなく低いだろうが。
「じゃあグラウカは?どんな風に戦うんだ?」
「私はこれです。」
「………ナニコレ?」
見たこともねぇ。
「これはフランベルクと呼ばれる剣です。」
へぇー剣の刀身がギザギザしてて、ヨーロッパの兵士が持ってそうな剣だな。なんかオシャレな感じでいいな。
「でも、そんな細い剣で戦えるのか?」
ポッキリ折れたぁーッ!?しそうだけど。
「これはどちらかというと、引きながら斬って傷をつけて相手の動きを鈍らせるイメージです。このギザギザで相手の肉を抉って出血を増やすものです。そうして相手の集中力を削いでいくって感じです。だからそんな何回も振ったり、攻撃を受け止めるのには向かないんですよ。」
「へー………」
怖……
「あ、ごめんなさい。食事の場でこんな話!ミネネさんもごめんなさい!」
「ん?別に構わねぇさ。」
ミネネさんは元冒険者だし、そこら辺は慣れてるんだろう。
「ごちそうさまでした。」
「おう。」
「私も、美味しかったです!」
「ありがとな。」
「アズミさん。」
「ん?」
「明日って暇ですか?」
「…………まぁ。」
おいミネネ!ニヤニヤ笑うな!
「一緒に魔物を討伐しませんか!?回復魔法があれば、もっと効率よく戦えそうですし………」
「まあ、良いよ。」
多分、曇天のメンバーも例の剣士案件でバタバタしてるんだろう。俺もそろそろ身体を動かしたかったし、ちょうど良い。
「ありがとうございます!では、明日のお昼に管理所に一緒に行きましょう!」
「あぁ。」
「それでは、私は部屋に戻りますね!」
そう言ってグラウカは階段を登っていった。
「お前ら……」
「何だ?」
「いや、何でも………」
ミネネさんが深めの溜め息をついているのが印象に残った。
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