第14話 日常へ
あぁぁぁぁぁぁぁ~~~~フィトテラピー♪︎
宿に戻る道中で、メヒシバの隙間に生えていたローズゼラニウムを採取してきた。これでフィトテラピーと言い切っても良いだろう。
ラサさんが発信したであろう正体不明の剣士の情報は瞬く間に各地に広まり、巷ではその話で持ちきりだ。
言っておくが、俺がわざわざ酒場とかに行って聞いたわけではない。近所の奥様や、そこらで走り回っている子どもがその話をしていたのだ。酒場なんかにでも行ったらなら、その話を肴に全員が飲んでいるだろう。それほどまでに、謎に包まれた剣士は人々の希望となっていた。
いやぁー大変なことになってるなぁ(他人事)。
正直、こんな力あったの知らなかったし、今更路線変更はなぁー。つーか、なんでこんな力があるんだ?
んーーーーやべ、思い付かんわ。
枯れ葉でも取ってるか。
こういう一つ一つが植物を上手く成長させる秘訣でもある。やはり毎日目で確認したいが、フランチェスカがいる手前、難しい以上仕方がない。
この枯れ葉どうしようかな……腐葉土にするか、細かく刻んで土に撒くか……まぁ後で考えよ。
とりあえず、ミネネさんに頼んでおいた木箱に枯れ葉をぶちこんで、保存しておく。
あと────あ!
「気温ー?まぁそろそろ暑くなるわな。」
そういやミネネさんに言われてたなぁ。詳しく聞いたら、この地域の夏は結構厳しいらしい。
だが!ここで俺の水魔法が真価を発揮するのだ!
なんと!湿気まで操ることが出来る!
本当に助かるわぁ。
ただ、今の配置だと日射が少々キツいかもな。フィカスのジンとシラタマホシクサは少し室内気味にしておこう。本来なら、フィカスのジンやシラタマホシクサにも日向が欲しいが、この宿はオンボロなため、室内(室外)と言うべきだ。そういうわけで、この二つは移動させる。
ライフパスのお陰で植物の状態が一瞬で分かるし水の管理も楽だし、久し振りにフィールドワークと洒落込むか。
前回のフィールドワークや、初めて来た時は北門からだったし、今回は南門から行ってみる。
ドイルはこの国でも比較的安全な街と言われていて、俗に言うスラムなんかも存在しない。と、聞いたが俺は確認してないからなんとも言えない。
まぁ前に行ったフダイトーは治安があまりよろしくなく、子どもは必ず親の傍にいないとすぐに拉致されるらしい。その話を聞いた時に思い出したが、確かに子ども達のすぐ傍に親らしき大人がおり、俺達を胡乱な目で見ていた。
それに比べて、この街では子どものはしゃぐ姿を大人は微笑ましそうに眺めている。スラムがどうとかは知らないが、拉致とかはなさそうだ。
南の門兵さんと少し話して、俺は門を抜けた。
しばらく街道を外れて森を歩いていると、川辺を見つけた。
「ここを軸にするか。」
とりあえず川の上流を目指して歩くことにした。
「……ん?これは……」
オオアレチノギクか。それもこんなに。このままじゃこの土地が荒れ地になるな。働いてたときも、こいつらは無限に生えてきてムカついたなぁ。枯れないし、除草剤の耐性も有りやがる。
まぁアブラムシのデコイには使えたが。
「今はいいか。」
さぁてさてさて、探索探索ぅ~。
今の俺は生産者ではなく消費者。自分の物以外に割く余裕はないのさ。それに、頑張れば食えるしな。クソ不味い春菊だけど。
「んっんっんー。」
俺はハミングしながら探索を進める。目ぼしい物が無くはないが、わざわざ捕獲して育てたいって程ではないんだよなぁ。
まぁ個人的には自然に囲まれた場所を歩けるだけで得した気分だ。
「おっ?」
雑草とは少し違うような物を見つけ、近寄る。それはかなり樹木や雑草の下に隠れていた。
「これは………セルリア?」
この細い葉としっかりとした茎……間違いないだろう。だが……
「難しいんだよなぁ………」
セルリアは水が大好きだけど水に弱い。
えっ?何言ってるか分からない?しょうがないじゃん。そういうもんなんだから。
それに湿度にも弱いし日射も強すぎるのはダメ。ドライフラワーとかブライダルとして使えるけど手間が………あれ?
「水魔法でどうにかなるんじゃ…………」
き、気付いてしまったぁぁぁ!
そうだよ!この力があれば!完璧な調整が出来るし、ライフパスで安心だ!
「俺は…禁断の力を………!」
周囲を見渡す。
さ、回収回収。決して、恥ずかしくなったわけじゃないからな?
ハァー良い年した男が何言ってんだか。
今日はセルリアだけにして帰ろうかな。またズエッタさんに良い鉢を作ってもらわないとな。
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