第4話 良い出会いに!

ーフランチェスカー


「んあ!?」

 飛び起きると、そこは冒険者管理所の医療室だった。

「あ、気が付きましたか?」

「…リオンか。」

 目の前には顔馴染みの職員であるリオンが心配そうに言う。

「状況は?」

「フランチェスカさんが倒れられてから二日です。龍種は討伐、死骸も回収され、他の龍種の影は確認されませんでした。」

「フゥー…そうか。」  

 肩の荷が降りた気がした。あの時………

「そういえば、ダンズとか他の奴らは?」

「全員無事です。それと、今回の龍種単独討伐により、フランチェスカさんの禊は終了です。これだけの功績なら、向こうも何も言えないでしょう。

 これで晴れて、フランチェスカさんはB…いえA級となります!」

 嬉しそうに笑いながら、リオンが拍手をした。

 ………は?私が、A級!?

「待て!違う!あれは私だけの力じゃないんだ!」

「またまたー謙遜はよしてくださいよ。だってあの場に他にいたのは新人のアズミさんだけですよ?フランチェスカさん以外に誰が龍種を倒せるんですか。」

「いや、止めを刺したのは私だが…えっと……」

「まぁまぁ、きっと疲れてるんですよ。少し休んでください。この後、ハタマンさんとの話がありますので。」

「あ……」

 そう言って、リオンは部屋から出ていってしまった。少しモヤモヤするが疲労があるのも事実。

「……寝るか。」

 めんどくせー事は後回しだ!








ーアズミー


 いやー、臨時報酬最高でしたわ!参加費だけでも俺の前世の独立前の月給位貰えたってのに、フランチェスカの傷や血液を水魔法で洗い落として、街まで運んだついでに、責任者のハタマンさんにさっき見たことを伝えただけで感謝された上に、かなりの額を貰ってしまった。

 いやぁ、ドイルの街を代表して英雄とその仲間に感謝しよう、って言われちまったよ。

 今の俺は無敵だぜぇ!?どれくらいかと言うと、初任給を貰った新卒並みの高揚感だぜぇ!?金額はそれよりも多いけどな!



 ということでやって参りました、ドイル市場。一月に一度、どんな人でも申請すれば物を売ることが出来て、規制もユルユルなんだとか。まぁ、やベー奴は売ってる途中でハタマンさんにチクられてお縄につくらしいが。

「せっかく金があるんだし、何か良いのがあったら欲しいよなぁ。」

 ボーナスも含めて俺の懐には日本円で六十二万六千五百円。

 出来れば、アカバセンニチコウを入れる用の鉢モドキが欲しい。土は外のやつで大丈夫そうだしな。


「右から、武器、武器、武器、武器、小物、武器、武器、防具、武器、防具、食品。……………マジか。」

 忘れてた…ここが日本じゃないって、戦闘が日常の異世界だって。

 まぁ、まだ反対側がある。

 俺は気を取り直して、最後の店にあったリンゴモドキを噛りながら見に向かう。


「む?」

 さっきと同じ、武器屋が三つ並んでいた隣に、陶器を売る店を発見した。

「ほぅ…」

 見てみると、陶器製のかなり深い器が目に映った。

「店主、これはなんだい?」

「んんー?」

 俺が声をかけると、大分暇だったのか、寝こけていたようだ。

「これについてだ。」

 この雑貨屋の店主は若い女性で、涙袋が特徴的な人だと思った。

「あぁ、これは食べ盛りの子供や大食いの人用の、おかわりする必要がない食器です。」

 なるほど、コンセプトはよく分かった。売れるかは知らんがな。それと、鉢として使え…無くはないが…


「店主…」

「あ、私の事はズエッタと。」

「了解しました、俺はアズミです。それでズエッタさん、これの半分ぐらいの高さの器はないか?」

「多分……こんなもんで?」

 奥の方から引っ張り出して来たのは、丁度良い大きさの器だった。

「良いですね。これを買わせてください。」

「わぁ、ありがとうございます。銀貨三枚です。」

 銀貨三枚、つまり三千円。

 ズエッタさんは丁寧に梱包を始めた。

「これも、食器で?」

「えぇ、まあ。」

「これ、手作りですか?」

「そうです。私は手が器用なのだけが取り柄でして。着色などもさせて貰ってます。」

 ズエッタさんが両手をグーパーしながら微笑む。

 へぇ~、それは是非、オーダーメイドのデザイナー鉢を作って欲しいな。

「ズエッタさん。俺はこれを食器ではなく、鉢…花瓶として使うつもりなんだが、構いませんか?」

「それは構いませんが…花瓶ならそちらにありますよ?」

 ズエッタさんは不思議そうに、ガラス製の口が細い花瓶を指差した。

「いや、俺はこの形が良いんだ。それと、工房はどこです?特注品を頼みたいんだが。」

「え、本当ですか?」

 俺の提案に身を乗り出すズエッタさん。

「はい、是非。俺、色や形にも拘りたくて。」

「分かりますよ、その気持ち!もちろん、引き受けさせていただきます!えっと、今欲しいデザインなどはありますか?」

「む、そうですねぇ……」

 やはり、愛しのブロンズドラゴンちゃんの家だし…

「では、黄色をベースに、白いレースのような模様が欲しいです。大きさはこの程度で。」

 俺は両手で円を作り、形を伝える。

「フムフム、了解です!では、こちらが私の所属する工房への地図です。」

「はい、確かに。

 ……会計も良いですか?」

「………あぁ!すみません!手が止まってましたね。」

 アハハ、と笑いながら商品を渡してくれた。

「では、こちらで。」

「はい、丁度三枚。ありがとうございましたー!いつでもまた御越しくださーい!」

「はい。」

 いやー、良い出会いが出来たなぁ。うっへっへ、まさか異世界でも我が趣味に拘れるとは思わなんだ。最高だぜ!




 ちなみに、それ以降の店は全て武器屋でした。

 折角だし、安いショートソードとナイフを勝っておいた。

 値段は合わせて金貨三枚銀貨四枚。三万四千円だ。

 そんなに使った覚えは無かったけど、アズミ君が元々持っていたナイフは安物だったのか、もうボロボロだった。

 良いの買った方がお得だったかなぁ…………

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