第4話 時空を戻す

カブトムシが教室の中をぐるぐる飛んでいる。

さすがに気づくかと思ったが、みんな気づかない。葉山も気づかない。

『これで確定だ。』

僕だけに見えるようだ。

葉山が「シュン、いるのか、カブトムシ?」

「いるよ。今、葉山の目の前を横切ったよ。」

「えっ、全く見えないぞ。」

まるまると太ったカブトムシは羽根から七色の粉を放った。

次の瞬間。

僕の鼻にギザギザ足で止まる。

「痛い。」

と同時に教室の時間が止まった。

みんなも横にいる葉山も止まっている。

「どう?シュン、僕のこと思い出した?」

「おい、太っちょカブトムシめ、痛いぞ。話の前に早く離れろ。」僕は鼻にとまったカブトムシを手で追い払った。

「乱暴だな。」

「はあ?カブトムシ。お前が言うな!」

「ひどいな、シュン、本当に僕のことを忘れたのか?記憶を戻せ、」

「いやだ。命令されるのは嫌いだ。それになんだこの状況!

時間を止めて、力をみせつけてもこわくないぞ。マンガじゃあるまいし、早く時間を戻せ。」

「いやだね。こっちこそなぜ、シュンの言うことを聞かないといけないのかな。

主導権はこちら側にあるんだぞ。」

「カブトムシのくせに生意気だぞ。」

カブトムシは急に怒りだして大きな角で僕の頭や顔をブンブン羽音を鳴らして攻撃してくる。

「やめろ!僕は何も悪くない。なんで僕に絡むんだ!」

「シュン、小学一年のあの夏のこと覚えていないのか?」

「小1の夏?あの夏は、」急に頭の中がうずいた。何かが引っかかっている。思い出せない。なんだろう。何があったんだ。頭の中で黒いモヤモヤが何かを隠している。誰かといっしょに夏の裏山を駆け回っている。緑の光景。太陽がキラキラ光って眩しい。しかし、だめだ。何かが邪魔をして肝心なところがくそー思い出せない。

「カブトムシ。思い出せない。僕に何か、大変なことがあったのか?教えてくれ。」

カブトムシは飛びながら「仕方ないな。僕も時間がないからな。知りたいなら、ついて来い。」

「どこに行くんだ。あの夏に時空を戻す。」

「カブトムシ、できれば葉山も一緒に頼む。連れていきたい。」

「葉山?あー横の彼?いいだろう。彼の時間を解くぞ。」

葉山が動き出した。「あれ?動ける。シュン、その顔どうした?ひっかき傷で顔が赤いぞ。」

僕はカブトムシを指さした。

「シュン、カブトムシだ。見えるぞ。目の前にいるぞ。」

「そうだな。これから時空を戻して過去に戻る。葉山付き合ってくれるか?」

「もちろんだ。」







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