第3話 学校とカブトムシ

僕は、しゃべるカブトムシを追って、ではないが高校は同じ、同じ駅だ。電車を降りて僕も学校へ向かう。駅からは遠くない。傘をさすのは面倒だ。一つ交差点を渡ればすぐだ。

一瞬、空を見上げた。散ってしまっが、4月の校門の桜並木はきれいだったな。

僕は早足で学校へ。

きっと、さっきの生徒も見ているはずだ。

校門へ入る。いた。さっきの生徒が校舎に入る姿が見えた。

まだ肩にカブトムシはついている。

しかし誰もカブトムシの姿に気づいていない。

「僕だけか。見えているのは。」

「おーい。シュン。おはよう。」葉山の声だ。

「どうした?ぼーっとして教室へ行くぞ。」

「そうだな。ただ・・・いや、何もない。行こう。」

さっきの生徒は左へ行った。たぶん、AかBクラスだろう。

僕はDクラス。廊下を右手に曲がる。

「なあ、葉山、カブトムシってつかまえたことある?」

「えっ?シュン、朝からいきなりの質問だな。

もちろんあるさ。小さい時は裏山に夏になると朝早く、父さんがよく連れて行ってくれたよ。」

「そうか。最近カブトムシ捕まえに行ったことは?」

「ないな。小学生の時までだ。中学の時は一度もないな。」

「僕も同じだ。葉山、信じないかもしれないが、今日電車の中にいたんだ。」

「えっ!電車の中?何かの間違いだろう。

それに少し早いんじゃないか?

いくら地球が温暖化って言ったって早すぎる。セミもまだだぞ。たぶん梅雨があけてからだろう。」

「葉山、信じないかもしれないが、

しかも、そのカブトムシがしゃべ・・・」途中で言うのをやめた。

「どうしたシュウ。途中で、やめるな。

気になるだろう。」

教室の前まで来ていた。

「しゃべったんだ、そのカブトムシ。」

葉山の手が、僕のお腹に「バッチーン。」

「シュン、冗談だろう。どうせ夜中までゲームしてて、寝不足なんだろう。朝からボーっとするなよな。」

あっけなく、重大事件は聞き流された。

その時だった。目の前にあのカブトムシが

「葉山、前だ!」

「カブトムシ!」

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