第12話 困惑 後
チーンと鈴を鳴らすと、すぐにドアからノックが聞こえてきた。
すげぇ、鳴らしたらすぐ来るとかどうなってるんだこのシステム。
自分の部屋じゃないけど、どう言えばいいのか…
わからん…とりあえず考えるのはやめとこ。
今いるのは俺だけだし、俺の部屋だ(?)
「入ってもよろしいでしょうか?」
ドアの向こうから声が聞こえる。
「あ、はいどうぞ?」
「失礼します」
わぁ、イケメンが入ってきた…イケメンというより爽やかイケおじか?
入ってきたのは黒髪を後ろに縛り、澄んだ青い目の長身イケおじだった。
さきから俺よりでかい人多すぎない??
俺、178だよ?
どういう立場の人なんだろうか…?
「あの、あなたは、どちら様で…?」
「私は、第2王子の執事、サリといいます、あなたは第2王子のお嫁候補なので私のことを自由に呼んで貰って構いませんよ」
「………はぁ!?第2王子!??嫁!?えぇ?」
第2王子の嫁候補とかどういうこと………?
えぇ…?俺男だけど…?マジで、どういうこと?
誰かタスケテ…
俺保護されてるだけじゃなかったの!?
その後は、平民まったりスローライフが待ってると思ってたよ………?
頭パンクしそうだよ!?
「あの…サクヤさん?」
「…あぁ、す、すみません」
サリさんがすごく心配そうな顔でこちらを見ている。
こことは本当に地球とは違うみたいだ…
ヒートとかオメガ(?)とか、男でも嫁候補とかマジでよくわからん………!!
でも、ここの国ではそれが普通のようだ。
知らない、って言うだけだと怪しまれる気がするし…どうやって聞き出そう……?
咲夜はもうご飯のことなんて1ミリも頭の中には残ってなかった。
あ、そうだこれならいけるか?
「あの、さっきはすみません、実は聞きたいことがあって、聞いてもよろしいでしょうか?」
「はい、なんなりと」
よし、とりあえず聞いてくれるな。
“異世界からきました☆”
なんて言ったら絶対問題事になる。異世界に飛ばされたばっかの俺でもわかる。
村の出で、集団でいじめられてて、まともに学校にも通えず、親には放置されてたっていう体で話そう。
大丈夫、半分くらいは本当のこと言ってるし…?
これなら、知らない理由について深く聞かれないはずだ。
名付けて、怪しまれない作戦だ。
名前がそのまま過ぎて笑える。
我ながら良い案だと思った。
あ、そういえば、王子に学生って言っちゃった気が…やべ、それもごまかそう。
「あの…、俺、村の出でして、言いにくいんですけど…俺、同じ年くらいの子たちに集団でいじめられて、村の人からも嫌がらせとか受けてて、学校あまりまともに行けてなくて…、親にも暴力ふられて放置されて何も教えて貰えなくて、、本当にいやになって、、死ぬ覚悟でここから逃げて来たんです。
だから、その王子が、言ってたヒートとか、オメガとかってなんですか…?」
実際一回死んでるんだけどね、多分。
そういうと、サリさんは俺を涙目で見つめてきたあと、いきなり強く抱きしめられた。
えぇ…なんで俺抱きつかれとるん………?
抱きつく要素あった??
しかも腕の力強すぎだろ、俺が動いてもびくともしない………
どうしてそうなった………
俺は途方にくれた。
不覚にも怪しまれない作戦を少し違う方向に大成功させてしまった咲夜であった。
ヤンキーの俺なぜか異世界の王子に溺愛される 餅巾着 @mamamamamakoto
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