第27話 傭兵

室内は既視感がある匂いが充満していて、あの壁の中の空間が脳裏をちらつく。


「酒臭いなぁ。」


「あ゛ぁ?誰だお前。」


予想通りチンピラ風の男が立ち上がりこっちに絡んで来たが気にせず無視し店員に地図の場所を尋ねる。


「地図ってどこにあります?」


「無視してんじゃねぇ!!」


沸点が低いのかチンピラが拳を振り上げ殴りかかって来たので、チンピラの拳が当たる前に腹に膝蹴りを入れてダウンさせる。何故か凄く悶絶していたが死にはしないだろう。


「他の人らは静かに飲んでるんですからそこで寝てたらどうです?少なくとも私は貴方に用も興味もありませんから。」


追い討ちをしたい気持ちを抑え再び店員に地図の場所を聞く。


「地図って扱ってます?」


それにしても不良崩れが多いって聞く場所にこんなスタイル及び顔面偏差値異常な奴がいて良いのだろうか?前世でもここまでの美形は見たことがない。この世界の人々が全体的に美形とかそう言う訳では無いのは商店街を歩けば嫌でも分かる。ここは異世界ではあるが現実でありゲームや創作の世界ではない。


「はい御座いますよ。あちらのコーナーが全てそうです。この地域周辺の物から辺国の物まで幅広く取り扱っております。ただ、これらの地図は遠くになればなるほど少し前のものになりますのでモンスターや自然災害の影響で地形が異なる場合もございますのでご注意下さい。」


前世の俺若しくはこの身体に性別があれば如何わしい妄想が浮かんだであろうと確信できる程度には店員のスタイル、顔面、態度、声などが良い。この不良崩れ共がそっち方面の犯罪に走らないのが不思議でならない。


「分かりました。ありがとうございます。」


俺はそんな事を一瞬思いながら地図コーナーに行き未開の地がありそうで尚且つそれなりに近そうな場所を地図を見て探す。


「ふーむ。東側に向かうのが良さげか。この地図を買おう。」


俺は良さげな所が描かれた地図を持ち定員の所へ持っていく。


「これ買います。」


そう言って手渡し貨幣を入れた袋を取り出そうとするがファングに括りつけた荷物の中にある事を思い出す。


「あ、ザンナ。ファングに持たせた荷物の中から財布取って投げて。」


そう指示して数秒経つとドアが少し開き凄いスピードで何かが飛んで来た。俺はそれをキャッチする。


「ちょっと勢いつけ過ぎじゃないか?…力加減覚えさせた方がいい気がする。事故った後だと取り返しつくか分からないし。」


俺はそう決心しつつ支払いを済ませ商品を受け取る。


「さて、次やる事も目的地も決まったしやるかー。」


欠伸をしながら退店しようと店の扉に手を掛けた瞬間背後から声をかけられた。


「少し良いか?」


振り返ると渋い声のイケオジが従業員用の出入り口と思われる扉から出て来た。


「何?」


傭兵の胴元は声と顔面偏差値が異常なのが当たり前なのか?そんな事を一瞬思ったがそんな訳がないと頭を振る。


「そこまで長い話にはならねぇから少し面貸せ。」


明らかに断れる雰囲気では無いので仕方なしについて行く事にする。

ここで無視して逃げるのも怪しいだろうし、ただでさえ治安維持組織から敵対されている疑惑があるのにこれ以上敵を作る必要はない。

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