第26話 行き先は如何に
「うーん。…逃げられた。」
俺が目を覚ますと鳥女二体は既に眼前に無かった。血の匂いにやられて思考がふわふわしていた最中の記憶がない。
「マジでこの身体なんなんだよ。血は酒じゃねぇんだぞ?」
こんだけ拷問してた最中に逃げられたのは最悪だ。敵の情報を知ることが出来ずに敵を作ったことが確定しただけなんだから。
「取り敢えずこの森に引き篭もるのは危険過ぎるな。落下中の鳥女が目視で確認出来るぐらい敵の本部と近いみたいだし…。」
逃してしまったものは仕方ない。悔いた所で戻ってくる訳ではない。次に備えるのが最善。
「木を隠すなら森の中って言うしあの都市の中で暫く潜伏し、敵が判明し次第それを倒す策を考えるって感じが良いんだろうけど、俺が隠れられたとして問題はこの子達なんだよなぁ。」
この子らは人を数人乗せて走れる程大きい。ペットの犬にしてはデカ過ぎるし、普通の狼って言ったらそんな物持ち込める訳がない。
「かと言って小さな市町村なら狼なんて脅威見つけた瞬間排除だろうし…。」
そうなればやはり未開の地での潜伏がベストだろう。
「ならばどこに潜伏しようか。」
手元には山賊のアジトから掻っ払って来た地図しかなく、この地図はごく小範囲の事しか記載されていない。これではここから離れ更には未開の地と言う条件を満たせない。
「まずはちゃんとした地図の新調だな。」
俺はザンナに跨り直し目的地を指定する。
「いつもの街に向かうよ。地図の販売元の心当たりはおっさんの話からしてあるし。」
俺は猛スピードで何だかんだ世話になってる街へと向かった。
街に着くと少し人気がない道に接する建物の看板を見上げながら目的の建物を探す。
「おっさんの話では傭兵は不良崩れみたいなのが多いらしいし、その傭兵を派遣する支店か本店は中心街ではなく適度に人がいない場所に構えていると踏んだが間違ってたか?」
この如何わしい店が多く並ぶこの道ならあると思ったんだが…。
「お、噂をすれば…。」
二人には外で待ってもらって俺だけが中に入った方が良さげだな。
建物はそこまで大きくないためこの子らを連れて入ったら中の備品を壊しかねない。そうなれば弁償だがいくらふっかけられるのか分からない以上余計なリスクは取るべきではない。
「ただ俺の見た目は餓鬼。威圧感も脅威も全く感じないだろうし俺が絡まれる可能性もあるのがなぁ。」
俺はどちらかと言えば圧倒的に弱者側だ。前世ならまだしも絡まれた時に自衛出来るほどの力はない。
「取り敢えず堂々とするぐらいしか対策として浮かばない。最悪応戦できる様にすぐに手が届く位置にナイフの位置を直してっと。」
俺は準備を整えると扉を大きく開けた。
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