第25話 吸血鬼の力

一瞬にしてミイラと化した女を放り投げる。


「クソ不味いな。人の血の味はするんだが何か混ざってる。いや、混ざりまくってるな。まぁ何がともあれ起きろ今死ぬ事は許さない。」


ミイラと化した女はグルーミィのその言葉を認識した瞬間大きく痙攣し操り人形の如く不気味な起き上がり方をしグルーミィの前に跪く。


「今からお前に命令を与える。その魂尽きる時まで俺に従え。そして初任務はスパイとして元主人の情報を探れ。達成すれば褒美をやろう。なーにこれは細やかなプレゼントだ。」


ミイラにした時と同じ様に首筋に噛み付くとミイラはどんどん生気を取り戻し元に戻った様に見えた。


「嘘…。マナ含有量が膨れ上がってる。最早別種、いや上位種…。」


側から見ていた鳥女は目の前の現実を受け止めいれずにいた。それもその筈マナ魔力の上限や保有量は生きた時間に比例するのが当たり前で、ここまで大幅な上昇が起きる時点で話が違う。量を増やす外付けの蓄電池の様な特殊な道具もあるがそれでもここまで増える事はあり得ない。


「はい。我が主人。貴方様に未来永劫の忠誠を。」


そう言って女はグルーミィの目の前に再び跪く。


「まさか公爵デューク以上の個体…あり得ない。そんなのあり得ない。」


「何を驚いているのかは知らないがもしかしてお前吸血鬼の増殖方法知らないのか?…仕方ない特別に教えてやる。吸血鬼は血を吸う際に己の血を送り込む事で眷属化及び同化出来る。これはどんなチンケな吸血鬼でも同じ。なんならその際に下の下が下の中になる程度の強化は自然と行われる。常識的な話だろ?普段の俺はある種現実から目を逸らし人間であろうとするから絶対に気づかねぇが本能は分かってる。この世界に来た時点で肉体的には人とはかけ離れた存在になってしまったんだ。」


「お前が吸血鬼だと言う情報は事前に掴んでいたけどこんなのあり得ないじゃない!!吸血鬼になったって暫くは元の自我が残る筈。なんでお前なんかに忠誠を誓ってるの!?」


怒りと悲しみに満ちた声でそう怒鳴るがグルーミィは動じない。


「何を言ってる?眷属化は自我を残したまま絶対に逆らえぬように脳の構造が自然に変わるだけ。忠誠を誓うか誓わないかは本人の意思だ。従えと言う命令に絶対忠誠は含まれない。一瞬で寝返ってしまう程最悪な環境で働かせていたお前の上司の落ち度だろ。だが安心すると良い。絶対忠誠を誓わずともお前も同じ末路を辿るのだから。」


「あり得ないあり得ないあり得ない!!公爵デュークはそんなホイホイポップしないし、仮に生まれてもこんなにマナ魔力の保有量が少ない訳がない。貴方何者なの!!」


グルーミィはその小さい手で鳥女の肩を掴むと同時に答える。


「嫌がらせの被害者か、単に運に見放された人間さ。安心するといい恐らく痛みは無い。」


鳥女の脳に声すら出ない堪え難い快楽が一瞬で押し寄せ脳を物理的に破壊し全身の水分の言う水分を吸い上げられる。直後に先程の快楽を軽く超える程の快楽と多幸感が全身を包み込む。わずか数秒にも満たないその時間は数千年にも感じられ様々な箇所が壊れては満たされ続けた。


「お前達はもう二度と快楽を味わうことの出来ない身体に成った。ギャンブルで大きな当たりを味わった者が数百円の当たりで満足出来なくなるように、高額宝くじを当てた人間の人生が破滅する様に、大き過ぎる快楽は知的生命体の脳を破壊する。そしてこの世で最も大きな快楽は死の瞬間だと言われている。さて、素直になったようだし尋問の続きをしようか。」


グルーミィはそう言って笑顔を浮かべた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る