第15話 巨人と不審者

時は経ち報酬受け渡しの日グルーミィは二人を連れて再び要塞都市へと向かった。


「おいおいおい、俺の目がイカれてるのか?こんなのアニメの世界じゃねぇか。」


巨大な防壁から頭を出している一つ目の巨人が遠目からでも見えた。所謂見た目的にキュクロープスと言う奴である。


「うん、討伐されるまで見守ろう。流石にここに突っ込む蛮勇さは無い。俺の知識で合ってれば相手は下級とは言え神の一柱ひとり。こんなのが来るぐらいだし普通に対策もされてるだろ。されてないなら滅ぶだけ。関わるだけ損。」


俺は正義の味方でも現実が分からない餓鬼でも無い。勝率ゼロの無謀で無益な賭けを行う程馬鹿じゃ無い。


「暫くここで待機してよっか。巨人の様子でも観察してよー。」


ただ待ってるのも暇なので木の上に登り目を凝らしながら巨人の様子を観察する。これが意外と面白く、巨人の表情はコロコロ変わり怒りに満ちた顔に変わると地響きが起き、愉悦の表情に変わると風下のこちらに血の匂いが漂う。まるでリアルな映画を見ている気分だった。


「早く討伐してよね。てか、なんで巨人は壁を壊したり乗り越えたりしないでその場に留まってるんだ?」


これ程まで大きな力を持っているのなら侵入など余裕な筈。人を殺したいのなら中に入った方が早いし、壁の外にいる意味がない。


「まさかブラフ?…裏で糸引いてる奴が居たらそうなるけど、単体の場合は目的何なんだ?」


考えた所で答えは出る訳無いが考えずには居られない。万が一そんな奴が居た場合こんな悪趣味なゲームに俺を巻き込んだ奴が関わっている可能性が高い。


「どちらにせよ今の俺に出来ることはない。討伐されるにせよされないにせよ。裏で糸引いてる奴が居たなら捨て駒にしていない限り現場に現れる。巨人を観測できるこの距離を保ちながらことが動くのを待つしか無いか。」


暫くの間木の上に座りながら目を凝らし巨人に動きがあるのをただ待っているとしたで待機している二人が慌ただしく動いているのが見えた。


「どうした?」


明らかな緊急事態であることを察し急いで降り姿勢を低くしながら辺りを見渡すが何も異変はない。


(この二人が反応しているのにこれはおかしい。)


カメレオン系の擬態能力を持ったモンスターの可能性がある。擬態系はどれも面倒で五感のいずれかが敏感で無いと感じ取る事はできない。俺は山賊のアジトでパクったナイフを抜く。


「山勘だがここら辺だろ!!」


ナイフを思いっきり突き刺すとガンっと硬い何かに弾かれた。


「わーお、ヤバいのに喧嘩売ったくさいな。ここは逃げる一択。逃げるぞ!!」


俺が目にしたのは三人の騎士っぽい奴ら。威圧感から明らかにこの世界の上位層っぽく、見るだけで相手との力量が桁違いに離れていることが分かる。


「待て!!」


「待てって言われて待つ馬鹿がどこにいるんだよ!こんなくだらない事やってないで向こうの巨人を殺して来たらどうだ。」


「やましいことがなければ待てるだろ!!」


「お前らみたいなヤバい奴と関わりたく無いだけだ。何より隠れて剣を抜き俺を殺そうとしてきた事は事実だろ。疑わしきは殺せの理論は分かるが黙って殺される程馬鹿じゃ無いんでね。」


それだけ言い残すと俺はファングに飛び乗り全速力で逃げ追跡を逃れた。

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