第8話 吸血鬼の片鱗
「足が速いだけじゃねぇ!!コイツら頭も良い!!」
「どうするんですか!!?」
二人の山賊はサーベルでどうにか狼の牙を防ぐが攻撃体勢に移行しようと動いた僅かな隙を突かれ顔に赤い線が走り血が垂れる。
「どうしようもねぇだろ!!攻撃行動に移る前にやられる!!回避や防御がほんの少しでも遅れてたら目玉と顔の肉が持ってかれてたんだぞ!!この速度をどうにかしないと防戦一方になる!!」
「方向的にお前らの親玉がいる場所へ逃げるならどうぞってか?巫山戯るなよ!!お前らみたいな化け物の親玉に俺が勝てる訳が無いだろ!!」
どうするべきだ?俺らがこいつらから五体満足で生還する方法はあるのか?
「早く戻って来い!!挟み撃ちと連携で食らいつくしかない。こいつは使えねぇしお前だけが希望なんだ!!」
そう思っていると二匹の狼が開けた道から何かが飛んできたのが見えた。その何かを俺は反射的に叩き落とす。
「今度は何だ!!」
身に覚えがある感触に違和感を感じ、視線を下に落とすとそこには…。
「あ、あぁ…。」
大将の首を取りに行った奴の生首が落ちていた。何か物凄い力で押し潰されたように額と後頭部が潰れ、見るも無惨な姿になっていた。
現実を受け入れる事が出来ず、思考が止まり動きが鈍る。当然そんな大きな隙を見逃す程狼は優しくなかった。
「あ、まだ殺さないで。」
奥から甘美で少し高い声が聞こえて来る。その声を認識した瞬間まるで洗脳系のスキルを受けたかのように思考が更に鈍化し目玉以外動かす事が叶わなくなる。
「おっさん、お前のアジト何処にあるの?死ぬ前に教えてよ。」
あぁ、頭がボーっとする。
「ちゃんとした布の服とこの辺の地図が欲しいんだよね。賊なんかやってるんだから当然この辺の地図はあるだろうし、服もその一着だけって訳じゃないでしょ。どうせ死ぬんだし俺が有効利用してやるよ。」
何も考えられない。自分が何をしているのか何をしていたのかも分からない。
「ほー、以外と近いんだね。ありがとう。」
何も…。
「よしよしよく待てたね。食べてよし!」
二人の狼は少し脂の乗った肉を骨も残さず貪り食った。
「あ、まだ居たんだ。お前には用無いし生き餌にするか。肉はすぐ腐るし鮮度は大事だもんね。」
そう言うとそれは頭の所持品であった縄を持ち生き残りを器用に縛りまるでハムの様な状態にすると一匹の狼に縛りつけた。
「先にアジトに失礼するか。一応最低限の人員が残っていることを警戒しつつ探索しに行こう。綺麗な服とかあるかな?」
「た、助けて。まだ死にたく無い。」
「殺人への躊躇の無さを見るに何人か殺してるでしょ。嫌がることはない。今度は君の番が来ただけだよ。さて、頭は二個とも持ったし聞き出したアジトへ行こう。居残り組は喜んでくれるかな?」
それは命乞いなど一切気にすることなく満面の笑みを浮かべならアジトがある場所へと移動を始めた。
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