第9話 略奪とトラブル
山賊のアジトへの略奪に向かうと予想以上に二つの頭が役に立った。相当慕われていたか恐れられていたらしく雑に放り投げた頭を見てアジトの警備に当たっていた人員は全員白旗を上げた。
「あっけな。じゃあ君達も生き餌ね。社会のゴミが他人の役に立てるんだから喜ぶべき事だよ?」
「ま、待ってくれ。」
「じゃあ聞くけど、君ら人殺しに関わった事無いの?」
「そ、それは…。」
「なら自分達は助かりたいなんて妄言聞き入れられる訳がない。さてと、服と地図をいただきましょう。」
壁に貼り付けてあった地図らしき物をとり、比較的綺麗な服をとり、食堂らしき場所に塩が入った袋があったのでそれもとる。服は今の俺の身長では少し大きかったため服の先を縛って着ることにする。一応ちゃんとした人が作ったであろう服は俺の作ったスッカスカの服よりも服としての性能が段違いである。
「あとは下着だな。これは流石にお古を使いたく無いからこの地図に乗ってる近くの村だか町だかで新調しよう。硬貨っぽい物が入った袋も見つけたしこれを腰に装備してっと。」
我ながら完璧である。やってる事は山賊から略奪しているだけなので山賊と大差無いが気にする事ではない。この世界の常識は分からないが山賊がうろつく程度には司法組織が緩いのは確かだしバレる事はないだろう。少なくとも科学捜査とかが出来る程の文明は無いと見て良いだろう。
「服や部屋のデザインから見て文明的には江戸後期か明治初期程度の想定で良いのかな?」
現代文明程には発展していないがそれなりに文明が発達してそうで現代知識はあまり役に立たないだろう。
「使えるのは黒色火薬を使用した簡易的な拳銃の製法ぐらいか。火薬の調合比率とか間違えるとドカンだし…。ただ、設備無しに弾は作れないし鍛治ができる訳でも無いから銃の製造は無理か。でも、このぐらい文明進んでれば銃ぐらい生まれてそうだし初見殺し性能は期待出来ないとなると態々使ったことのない銃を使うメリットはないな。」
取り敢えず今は武器として使えそうな物を幾つかいただいて拠点に戻ろう。正直ここの方が快適な環境であるが沢山の知らんおっさんが寝泊まりした後の場所に住みたく無い。何より彼らは山賊で衛生状態が分からない以上、そんな奴が長年生活していたであろう場所に留まるのは感染症などの観点から見てもリスクが高過ぎる。
「おいお前武器庫は何処だ?賊なんだから武器をまとめて置いておく場所ぐらいあるだろ。手ぶらで襲っても返り討ちに遭うだけだしな。」
「お、教えたら助けてくれるのか?」
「生き餌に人権があると思うな。お前は教える以外の選択肢は無い。嫌なら今死ぬだけ。」
「なら…。」
「考え方を変えてみろよ。生き餌って事は逃げれる可能性は大いにあるし、仮に今治安維持組織が俺を発見した場合お前らは保護される事になる。生きていられると言う点で見れば生き餌も破格の待遇なんだぜ?本来なら即皆殺しにされる所を保留にされていると言う事は役に立てば生き残れる可能性だってある。」
完全にハッタリである。この世界の秩序は全く分からない。ただ、江戸の刑罰で複数回の盗みをすると処刑になるみたいな話があった気がするしあながち間違いではないだろう。…多分。
「た、確かに。アイツらが来たら一族諸共皆殺し…。言い訳も命乞いも聞かず即殺される。」
「な?なら無駄な抵抗はせずに教えた方が得だと思わないか?ここに戻って来れるかも分からないのに未来の心配をして今死んだら元も子もないだろ?」
「う、確かに…。」
納得したのか武器庫の場所を教えてくれた。滅茶苦茶チョロい。
山賊の癖にガサ入れとかも警戒していて武器庫は隠しスイッチを押して木箱をいくつか退け板を外し下へと続く階段を降りて、やっと辿りつく場所にあった。こんなの普通に探索して見つかるかボケ!!
「ほー、どれが良い奴かなんて分かんないな。」
取り敢えず遠距離系は訓練積まないとまともに当たらないだろうし論外として、他の武器も多種多様だ。
「うーん、当たらなくとも牽制として使える投げナイフ数本と普通のナイフで良いか。品質は肉で見れば良い。」
投げナイフの大きさ的にダーツとかと同じ要領でいけそうだし結構良い拾い物をしただろう。品質確認を肉で済ませ、もう用はないのでこの場所から離れようとした瞬間何かが聞こえた気がした。
「なんか音がしなかったか?」
気のせいかもしれないが山賊の生き残りが居て後々復讐なんてされようものならたまったもんじゃないのでファングを呼び、警戒しながら地下を探索する事にした。
「あ、あの。そろそろ下ろしていただけないでしょうか。」
「そう言えば生き餌第一号を付けたままだったな。丁度いい、お前この地下にも見張り居るか分かるか?」
「知りませんよ。僕新入りなので…。」
「ほー、最近賊に落ちたのか。おっさん若いのに可哀想だね。でも同情はしないし決定も覆らない。人殺しに加担した時点で殺されても文句を言える道理はない。」
そんな会話をしながら進み、念入りに調査する。隙間風とかだったかもしれないが違ったら後が怖いし安心するためにも隅々まで調べ上げる。
カチッ。
「あ、やったかもしんね…。」
何かを押し込んだと思ったら壁が揺れ始めた。いつでも逃げれるようにその揺れてる壁が視認できる場所で出入り口に最も近い場所に移動した。
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