第6話 山賊
「取り敢えず服も火も手に入れたし、簡単な石鹸も作るか。」
俺はその辺に落ちてた少し窪みがある石に動物の油と燃やして出た木の灰を突っ込む。しばらく煮ると独特な匂いがするクリーム状の何かが出来上がった。
因みにこの単純なレシピは少し前に歴史の本か何かで見た物で実践経験は無い。そのため安全性や効果など色々不確定要素が多い。
「臭いが除菌効果はある…はず。取り敢えずこれを…。」
ファングとザンナに塗りたくりわしゃわしゃと洗う。
「寄生虫とか色々居たら嫌だからな。本当はちゃんとした石鹸や薬で対処すべきなんだけど流石に作れないしこれで我慢。…意外と嫌がらないんだなぁ。」
無抵抗なのが意外である。こう言うのって大体嫌がって逃げ回るのが普通だと思ってた。
「あ、ちょっと待って。まだ終わってないけど。」
二人が急に走り出し何処かへ行ってしまった。嫌がっていた感じじゃ無いし何かの緊急事態か?
「はぁー、追いかけてみるか。」
手を水でジャパジャパ洗って石鹸を落とすと二人が走って行った方に全速力で向かう。十数分全速力で走ると二人が何人かの人間と対峙していた。
(格好からして山賊か。…あー、ナワバリに侵入した奴をぶちのめしに来たのか。でも人間様に勝てるか?)
暫く考えた後加勢することにした。二人は俺の部下だし死なれては目覚めが悪い。
俺はそんな事を思いながら石を拾い狙いを定め本気で投げる。俺が投擲した石は死角から山賊の頭に当たり頭蓋を変形させた。
「何者じゃ!!?」
山賊の
「
二人にこの指示が正直伝わるとはと思ってなかったが実際は伝わったので良しとする。俺が山賊の
「
「て、撤退だろ!!命あっての物種だ!引き際がわからない程馬鹿じゃ無い。」
っと言っているが俺は逃す気は無い。二人も同様の様で狩り尽くす気のご様子。相手の手駒は残り二匹、
(ふむ、移動して狩れるだけ狩るか。)
今だに俺の位置には気づいていないが投石の方向が視認されていた場合、再び統率が取れたこの状態だと俺が狩られる可能性がある。場所を変えて情報をリセットし、相手の手駒を全て持ってく。
「
「待て、すでに移動していた場合相手の思う壺だろ。」
「流石にこの短時間で痕跡を消しながら移動出来る奴は居ませんよ。この狼の親分を殺さないと多分追加が来ますよ。多少のリスクは取るべきでしょう。」
「任せた。俺らは犬っころ二匹を殺してから援軍として向かう。」
「了解。」
(おー、かっこよ…。映画のワンシーンかよ。かっこよくても殺すけどね。)
俺的には敵は増やしたく無い。ここは俺の知ってる世界じゃないから色々常識が分からない。そんな世界で敵を作るぐらいなら皆殺しにして証拠隠滅するに限る。二人の反応から鑑みるに奴らで敵対者は最後だろうしそれぞれ一匹ずつ殺せばいい。それだけで脅威が無くなるなら殺すべきだ。
俺は木の上に潜み息を殺す。向こうからこちらに来ると言うことは警戒されながら探されるため不意打ちがし難いと言うこと。流石に正面から向き合えば俺が瞬殺されるため敢えてこの場所を選んだ。登って追い詰めるにしても木を切って無理矢理追い詰めるにしても俺が先手を確実に取れる。この場所からなら飛び降りて額に着地するだけで体勢を崩せる。異世界人が頭おかしいぐらい体幹が良ければこの策は愚策に変わるだろうから一種の賭けでもある。
(さぁ、来い。ぶっ殺してやる。)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます