第5話 原始的な暮らし

「いやー、マジで狼って賢いな。本当に水辺に着いちゃった…。」


少し引きながら血まみれの身体を洗う。


「飲料水にするには濾過と煮沸は必須だな。これはこのまま飲んだら絶対腹壊す。」


色がお世辞にも綺麗とは言えない。濾過は布砂炭砂利小石の順番で作ればいい。水辺が近くにあるから布は作れる。


「火…は火打石探すか。意外と色々火打石として使えるから大丈夫だと思うけど鉄なんてあるか?」


流石に一人で鉄は作れない。しかもこの世界がどの程度文明が発達しているのかが未知数である以上鉄が入手できるか分からない。


「やっぱ気合と根性で擦りまくって火付けるしか無いか?」


まぁ、悩んでも仕方ないので先に服を作る事にする。


「不在になったとは言え元文明人として全裸は気持ち悪い。というよりも俺は露出の趣味はねぇ。」


俺は周囲を散策し使えそうな植物を集めて集めて集めた。使えるかどうかは皮剥いで叩いて繊維を取り出せるかどうか。品質なんてどうでもいい。兎に角量が必要だからそれを繰り返した。一応他にも繊維を取るには腐らせると言う最も簡単な方法もあるがアレは時間がかかる。大昔の話なので正確には覚えていないが二〜三週間程放置しなければならなかった気がする。


「気が遠くなるぅ。繊維は水につけて湿らせて捻って糸状にしてあとは編む。気合の手編み…。俺は細かい作業嫌いなのに!!」


ギャーギャー言っても終わらないので何徹もしてどうにか服を作り上げた。一応隠しただけなので防寒としては死んでいる。しかも上下は繋がっているしデザインも終わってる。


「流石に元の身体じゃない自分の腹回りとか大きさ分かんないし大きめに作るしか無かったから繋げるしか無かった。後は火、火を手に入れれば勝つる!!」


火が手に入ればこの肉も生木燃やして干し肉作れるし一気に生活しやすくなる。布を作る過程で糸は作ってあるのでそれ編んで紐は作れる。つまり弓ぎり式の火おこしは出来る。ただ、理屈ややり方を知っていても実践経験が無い奴が記憶を元に再現した所で出来るかどうかはわからない。


「あー、やってやるよぉ!!気合の弓ぎり式火おこしだぁ!!」


俺はそう言うとザンナに跨り、ファングにも指示を出す。


「ファング、枝及び少し太めの木を集めろ。俺らはいつも通り食糧を集めるついでに乾燥した木を探す。」


木の実やキノコを採取するついでに乾燥している木と枝を全力で探す。数刻程度走り回ってやっと見つけた。

因みに俺が狩りに同行しているのは彼ら以上に視力と動体視力が高いらしく見つけ出すと言う点においては彼らを軽く上回っているためである。

でもまぁ、バイク並みの速度で走るザンナを乗りこなすのは大変で最高速で移動すると滅茶苦茶不格好になるのが玉に瑕だ。だって馬の様に乗りたいのに最高速だと跨ったまま前に倒れた姿勢になり横の毛を掴み振り落とされない様にしなければ普通に振り落とされるんだもの。まだ乗馬マシーンの方が優しい…。


「湿度が高いから乾燥した落ち葉と枝と木を探すのも一苦労だが見つけた以上は気合で付けるのみ!!」


どうでも良い事はさて置き、俺は枝と木を滅茶苦茶擦り続ける。半日程擦り続けると煙が少し出始めて火種ができ始めたのが分かる。


「いいぞぉ!!いいぞぉ!!やっとまともな料理と水が手に入る。やはり火は最も偉大な発明だ!!祖先様様だな!!」


またしばらく経つと煙の量が増え火種が完成した。俺は繊維に火種を移し息を吹きかけ火を大きくする。落ち葉も集めてあるので落ち葉を突っ込み、枝を突っ込み、太めの枝に木と徐々に火を確実な物にしていく。


「お、おぉ!!最高だぁ!!最高の気分だ!!やっと生肉食から解放される。」


食のありがたみと火の偉大さを実感しながら俺は後ろに倒れる。


「疲れたぁ!!疲れたよ!!本当っ!!でも、これで原始人程度の生活が戻ってきた。最低限の生活基盤を整え現地民を探す旅に出よう。あー、これで色々出来るぞ!!」


俺はそのまま横に転がりながら移動し、水辺近くに落ちている拳ぐらいの大きさの石を拾い集めると火を囲う様に配置していく。


「キャンプはあんまやった事無いから分かんないけどこんな感じだろ。さー、お待ちかねの料理の時間だ。…まぁ、ただ焼くだけだから料理というのも烏滸がましいけど。」


肉を適当なサイズに千切り、生木の枝に付け焼く。少し焦げ始めたのを確認したら火から離し口に運ぶ。


「固い。滅茶苦茶固い。とても食えた物じゃ無いが生肉とは安心感が大違い。もー最高ー。取り敢えず残りの肉の半分は燻して干し肉にしよ。そっちの方が日持ちするし。」


因みに肉を燻している待ち時間に餌やりも兼ねて火を通した肉を彼らに与えてみたが不評でどうやら彼らは生肉の方が好みであるらしい。半分生肉のまま残しておいて良かったと思う。

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