03:謁見


 王のいる謁見えっけんの間までの長ったるい城内をようやく歩き終えて、オレと少年は大きな扉の前で立ち止まった。

 中に立ち入ろうとするオレたちを、両脇に佇む見張りの兵士が制止したからだ。


「お待ちください、ベルトラン殿。今、陛下は冒険者組合の方と話し合いを行っている最中です」

「ああ、悪い。そうだったか」


 オレは何の躊躇ためらいもなく扉を抜けようとした自身の非を素直に謝罪した。

 謁見の間の前から数歩ほど後退して、兵士二名の警戒の眼差しから遠ざかる。


「…………」


 しかし、ここには数度ほどしか足を運んでいないはずだが、もはや誰とも知らぬ兵士の有象無象うぞうむぞうに顔と名前を覚えられていることには我ながら呆れ果てる他ない。自分の人生を思い返す限り、善行で名を知らしめたことは一度だってないだろう。


 それに比べて……白銀の甲冑を身にこなし、王の御前に盾として立ち塞がる兵士の忠実にして誉れある

立ち姿には感動すら覚えそうだ。


「まだか?」

「…………話し合いが終わるまで、お待ちください」

「そうか。で、いつ終わる?」

「分かりません」

「そうか。――〈遅延レンテ〉」


 オレの無造作な詠唱に兵士が驚愕の表情を浮かべる。

 咄嗟とっさに鞘から剣を引き抜かんと身を構えようとして、――そこで彼らの時間は引き伸ばされることとなった。


 魔術の詠唱を認識する寸前のあんぐりと口を開けた顔が何とも面白く、見張りが謁見の間の前で見せていい表情ではないと断言できる光景だった。


「え……い、いいんですか!? こんなこと!」


 後ろを付いてきていた少年が慌てた声を上げる。


「よくはないだろうが、まあ時間は有限だからな。さて、行こう」


 今度こそ、オレは大きな扉を押し開けて、謁見の間に足を踏み入れた。




「――ええ、商会の顔ぶれに連絡は飛ばしましたが、今のところ“ミラの花”を見つけられた者はいないそうで……ん?」


 扉の開く音が広間に響いてから数秒ほど遅れて、王の前に立つ男が後ろを振り返った。

 目が合う。先ほどの兵士が言っていた冒険者組合の人間だろうか。横合いを十数名の臣下たちに囲まれながら、玉座に深く腰をえる国王――シルヴェストル王の鋭い視線が自分から背後に向けられたのを感じ取ったのだろう。


 オレはいぶかしげにこちらを見る王よりも前にまず、冒険者組合のその男に謝罪することにした。


「邪魔してすまん」

「え、ああ、はい」

「何用だ、魔術師。陛下が来客と話し合いの途中であることが見て分からんのか」


 突然、横で控えていた臣下の一人が忌々いまいましげな声で口を挟んできた。

 声の主は、白髪交じりの頭に深い皺を刻んだ面、そして、その歳にして老いをうかがわせぬ戦士の瞳孔が印象的な中老の騎士だ。がっしりとした体躯に鎧を着込み、自国の象徴である鋼の花を胸に飾るその姿は、おそらく、この王都に住まう人間ならば王と並んで知らない者はいない。


「セヴラン総帥そうすい、奇遇だな。こんなところで会うなんて」

「何用だと聞いているのだ。さっさと質問に答えなければ、次には檻をへだてて会うことになるぞ」


 中老の騎士――セヴラン・レヴィナスの態度に、周囲の臣下たちも右にならうように臨戦態勢を取り始める。

 何とも、穏やかではない応対だ。背後から少年の押し殺したような小さな悲鳴が漏れ聞こえてきた。


「用件は話すから、その前にまず座れるものをくれ。ここまで歩き続けて足が痛くてな。三人分頼む」

「……貴様」


 眼の奥に明らかな殺意を灯したセヴランがこちらに歩き出そうとする寸前で、


「よせ、セヴラン。この者に席を用意してやれ」


 ――先ほどから沈黙を保っていたシルヴェストル王の声が、謁見の間を重たく響いた。

 威厳ある統治者の命令に、広間の隅で控えていた騎士たちがすぐさま椅子をきっちりと三つ、オレたちの後ろに用意する。


「ああ、助かった。感謝します、王。さてと、よっこいしょ」


 三つある内の一つを少年に、残りの二つをオレと、オレの両足が使うことになった。

 周囲の視線が殊更ことさらに厳しくなっていくのを身に迫るほどに感じているが、オレは構わずに自分の足を労わることを選ぶ。


「…………まだ若いというのに大層なものだな、魔術師」

「おいおい、今は王と話しているんだ。横から話しかけてくるのは失礼じゃないか? セヴラン総帥」

「貴様の態度のほうがよほどっ……」


 こらえ切れないといった様子で身を乗り出すセヴランに、またも王が咳払いをして制止する。次いで、オレの近くで困惑したまま成り行きを見守っていた冒険者組合の男に一言伝えると、男は王に向かって深々と一礼して、扉のほうに去っていった。


「ベルトランよ、用件を話せ。もしも貴殿の師であるリディヴィーヌに会いに来たのならば、今は不在であるぞ」

「そうだったそうだった。申し訳ございません、王よ」


 オレは座りながら姿勢を正して、上半身だけを王に向き直る。


「実は西のセンピオール蒼林そうりんで……この少年の住まう村が魔獣に襲われたという話を彼から聞いたので、王にご報告をと思い参りました」

「センピオール蒼林? あの一帯は過去に騎士団が〈真理の器ヴェリテス・ノルム〉の捜索を行った結果、安全だと把握したはず。魔獣が出ることはありえません」


 臣下の一人が横槍を挟む。どいつもこいつも勝手に会話に割って入ってくる。礼儀というものを知らないのだろうか。


「不発だった装置が何かのきっかけで起動したんだろう。前例がないわけじゃない」

「魔獣に襲われた……それは真の話か」


 シルヴェストル王がやや落ちくぼんだその目を、オレの隣に座る少年の方へと向けた。

 身を縮こめたまま座っていた少年は突然の問いにびくりと体を弾ませて、それから慌てた声で「は、はい」と答える。


 その返事を聞いて、しかし、王は依然として険しい表情を崩すことはなかった。当然のことだ、少年一人の言では兵を動かすほどの根拠たり得ない。

 オレは懐から、少年の話を聞いた際に受け取った紋章の装飾品を取り出す。


「これは少年の住む村が戦乱の時代に、先代の国王からたまわったとされている報恩ほうおんの証だそうです。村で危機が起きたとき、これを見せれば王の助力を得られると代々村の者たちが受け継いできた紋章だと聞きました」


「…………」


「彼は村を魔獣に襲われてから今日に至るまで、王都に続く道のりを、馬を走らせながらやっとの思いでこの場に辿り付いた。だというのに――ここの役人は無慈悲にも少年を門前払いし、今は別件で忙しいのだと取り合わなかった。……あまりにも嘆かわしいと思うのはオレだけか?」


 両手を広げて、身振り手振りで悲しさを表現する。

 そんなオレの動きがかんさわるのか、はたまた何か思うところがあるのか。王は眉間に皺を寄せながら、玉座の肘掛けに触れていた手を自分の額に持っていく。


「苦しむ民のために力を使わず何が王か――今のお姿を王都の民が見ればさぞ失望することだろう。大陸の和平に尽力した我が師リディヴィーヌも悲嘆に暮れて」


 言い終わる前に、控えていた騎士の一人が――椅子に座るオレを強い力で引き剥がし、地面へと叩き付けた。


「おい貴様、いい加減にしろ。絞首台に立ちたいのか」


 さすがの騎士たちも、ただ横でオレの不敬を見守るほど職務怠慢な連中ではなかったようだ。王の前にひざまずかせんと無理やりに頭を押さえ付けてくる。


「本当に魔獣が現れたとして、その村の住人がまだ生きているという保障はない。……力になれず申し訳ないが、冒険者組合に相談することをおすすめしよう」


 かたわらで腕を組みながらオレを見下ろしていたセヴランが少年に言う。


「冒険者は今、お前たちが依頼を独占しているだろう?」

「私が先ほどの者に取り計らう。貴様の忠告は不要だ、さっさと帰って賭博場にでも入り浸っていろ、若造」


 そう吐き捨てるように言うと、セヴランは俺を取り押さえる騎士に「連れて行け」と短く命じた。

 とても違和感を覚えるやり取りだ。なぜ、忠誠を誓う王の判断を仰がずに、臣下たちがこうもはっきりと拒絶の意思を実行することができるのだろうか。オレはその理由を察していた。


 頭を押さえ付けられながら、オレは、泣きそうな顔で椅子から立ち上がって周りを窺う少年をちらりと見た。

 さて――頃合いだろうか。


「まあまあ、そう怒らないでくれ。……ところで、“第二王女”の体調はいかがかな、シルヴェストル王よ」

「……、……」


 第二王女。その言葉に、王が小さくうめきを漏らしたのをオレは聞き逃さなかった。


「シルヴィアだったか? いや、シルヴィン? まあどっちでもいいが、あなたの愛娘の第二王女は体が弱かったな。冒険者組合の依頼を独占している“ミラの花”は、その持病の悪化を和らげるものか」


 その問いかけに、周囲の空気が一変する。

 先ほどまで向けられていた部外者に対する視線が、不審なものへの疑いから、この男は何を知っているのか――そんな詮索の目つきに変化していた。

 オレを押さえ付けていた騎士の手が少しだけ緩まったのと同時、顔を上げる。


 王の双眸そうぼうがはっきりとオレを捉えていた。その瞳は、統治者としての威厳の色ではなく、あくまでも、一人の娘を想う親としての色を宿していた。


「…………その通りだ。娘の体調が二日前から芳しくない。貴殿はミラの花について何か情報を持っているか」

「いや。オレが知っているのは、どこに咲くとも知らない稀少きしょうな花だということくらいだ。噂では、神に見初みそめられたものの近くに咲くとか、咲かないとか」

「はっ、戯言ざれごとだな」

「オレも同意見だ。馬が合うじゃないか、オレを押さえ付ける係。そろそろ手を離してもらえると、もっと意気投合できる気がするんだ、が……ぐおっ」


 意見が合ったはずの騎士はなぜか、先ほどよりも強い力でオレの頭を押さえ付ける。

 これだから騎士とは分かり合えそうにない。冒険者の間で、傲慢が鎧を着て歩いているような奴らだと嫌われているのも多分に頷ける。


「つまり、貴様は何も知らないということだな、魔術師」

「逆に聞くが、誰も知らない……どこにあるのかも分からない花を探すために、お前たちはこの少年の村を見捨てるのか?」

「…………」


 地面すれすれに近づく視界の端で、何かを言い掛けたものの言葉を飲み込むセヴランの顔が映った。

 その顔を見て笑いそうになったのを堪えながら、真面目な調子で話を続ける。


「オレの結論を聞くか? いや言わせてくれ。その第二王女の体調は良くないらしいが、すぐに死ぬことはないだろう。万が一があったとしても今日、明日の命じゃない。余裕はあるんだ、それこそ今、死の危機に晒されている民を救うために多少の兵を動員するくらいはでき――ごふっ」


 発言の途中だったが、オレの抵抗も空しく、眉目秀麗びもくしゅうれいなこの顔面は地面と接触することとなった。

 追い討ちを掛けるように、いつの間にか近付いていたセヴランの足がオレの頭を踏み付けて、続けざま、鞘から剣を抜く音が靴裏を通して聞こえてきた。


「ぐぐっ……靴は汚いから人の頭の上に乗せちゃダメだって、子供の頃に教わらなかったか、爺さん」

「貴様の減らず口は“黒百合の徒セクサンブラ”の中でも一に聞くにえん。邪悪そのものだ。リディヴィーヌの弟子といえど、大魔術師にもいらぬ首だろう。つまりは、この場で斬り落として道義に外れることはない」

「こんな男が騎士団の総帥を務めていることも中々の邪悪じゃないか?」


 圧し掛かっている足の動きから、絶賛、剣を振り上げた状態であることが伝わる。

 もう少し引き伸ばせればと思っていたのだが、早くも時間の限界らしい。


「よさないか、セヴラン」


 シルヴェストル王の制止する声が広間に響く。しかし、セヴランの足に掛けた力が弱まる気配はない。これは本気の構えだろう。

 王の言葉より沽券こけんが大事か、と言いたいところだが、この中老の騎士は戦線で多くの武勲を立てて名を示した“千戦不敗のセヴラン”で知られる総大将だ。今まで言葉による対話ができていただけ奇跡なのかもしれない。


 そんな風に流れに身を任せていると、ふと、玉座の向こうから扉の開く音がした。


「――――」


 一瞬、謁見の間が静寂に包まれる。

 どうやら、ようやくお待ちかねの人物がこの場に顔を出してくれたようだ。


「――――お父様、わたくしはっ……大丈夫です」


 頭上から聞こえてきたのは、今にも消え入りそうなほどにか細い声量の、少女の声だった。

 オレの踏み付けられて地面と一体化した視界では、現れた人物の顔を目視することができなかったが、その第一声から考えるにおそらく……


「シルヴィ、なぜ、起き上がってきたのだ。具合は……」


 シルヴェストル王の、動揺が隠し切れない憂慮ゆうりょの問いに、第二王女――シルヴィが囁くような声で応える。

 だが、返事をした直後、苦しそうな咳き込みが王女の口から止めなくこぼれ出した。


 そのくぐもった悲痛な響きに、さすがのセヴランもオレに構うことを止めて王女のもとに駆け出した。


 踏み付けの拘束から解かれて自由となった頭をひょいと持ち上げて、謁見の間に現れた第二王女と――その斜め後ろに寄り添う従者の顔を確認する。


「なぜこの場に連れて来たのだ、メリザンシヤ! シルヴィ様のお側に仕えて容体が変化しないか見守るのがお前の役目だろう!」


 メリザンシヤ、そう呼ばれた女はしかし、中老の騎士の鬼気迫る声に動じることはなかった。

 まるで氷像のように表情の一切を動かすこともなく、両の眼だけが冷やかに騎士の方を見定める。


「…………シルヴィ様が行きたいと仰った、その言葉に従うのが私だ。貴公の言う役目には覚えがない」

「っ、貴様ら……! おい、誰か医者を連れて来い!」


 セヴランはオレと、王女の側に立つ従者の女を交互に睨んだ後、臣下たちにそう命じた。


(はは、この女は相変わらずだな)


 王女の従者――メリザンシヤと視線が合う。


「…………」


 騎士たちにも並ぶ長身と、冬の湖面を思わせる無感情で切れ長の瞳が、地べたに這いつくばったオレを睥睨へいげいする。


 それは紅い髪を背中に流し、聖職衣に似た漆黒の装束しょうぞくを纏う――“黒百合の徒セクサンブラ”の一人にして、リディヴィーヌの一番弟子の魔術師。

 オレの“姉弟子あねでし”に当たる女であった。


 臣下の囲いが王女の不調にどよめく中で、メリザンシヤただ一人だけが、黙しながらオレを見下ろしていた。


「…………」


 侮蔑している目である。まあ、いつも通りのことだが。

 オレは姉弟子の毒のある視線をかわして、王女へと向き直る。ちょうど、咳きが落ち着いたのか、部屋へ引き戻そうと肩を差し出す騎士の申し出を丁寧に断って、シルヴィは王の側へと歩みを進めた。


「お父様、わたくしのために……兵や冒険者の方々を動かすのはお止めください」


 第二王女シルヴィの、王である父親譲りの紫の瞳が微かに揺れ動く。

 か細い響きでありながら、されど凛とした声音で王に意見を申すその姿は、とても病人には見えない。実際、気迫以外にも、最低限の化粧が虚弱な部分を隠しているのだろう。顔色で言えば、寄合所ギルドハウスの執務室にこもり切りのアシュドの方がよほど不健康に見えるくらいだ。


 年の頃は十五、六ほどだろうか。父親からすれば、まだまだ愛らしい娘として過保護になる時期かもしれない。

 王女は、譲らない様子で王の前に立ち、言葉を続けた。


「わたくしも、彼の村が危険な状況だという話を……聞いておりました。どうか、村の方々を助けるために、魔獣討伐の部隊を……」


 そこまで言い掛けて、シルヴィは苦しそうに咳き込む。

 その様子に、シルヴェストル王が居た堪れないといった顔で声を掛けた。


「シルヴィ……今のお前の容態は、お前が思っているよりも深刻なのだ。痛みは魔術で多少抑えることができても、症状を緩和することはできない。……唯一、ミラの花だけが――お前の病気の進行を止めることができると、多くの識者がそう答えたのだ」


 話しながら、王の視線が、オレの斜め後ろで力なく佇む村の少年へと移動する。


「村の子よ。先ほどセヴランが言った通り、冒険者組合に話を通して狩猟団を村に向かわせることにしよう。魔獣の群れの規模はどれくらいだ?」


 王の咄嗟の問いかけに、少年が弱々しく答える。


「え、あ、えっと、猟師のリューヒさんが言うには、百匹くらいが村に向かってきたって……」

「――百だと」


 その返答に、王はもちろん、周囲の臣下たちや王女、あのセヴランさえも唖然とする表情をした。


「はは、百とは驚きだ。オレの記憶が正しければ、魔獣一匹を始末するのに兵士が二人は必要だったよな?」


 今度はオレの横槍に釘を刺すものは現れなかった。

 魔獣といえど、大小様々な種類の獣がいるが――オレが言っているのは、ここ数十年に記録されている中でもっとも小さいとされている種類――俗に“狼の魔獣”と呼ばれている個体の話だ。対魔獣用に訓練されていない兵士では二人掛かりがやっとだと、誰かから聞いた覚えがある。


 その点、魔獣の討伐に関しては専門知識の豊富な冒険者の方が適任なのだろう。組合に任せるというセヴランの方針は間違っていない。……が、ここで譲るわけにはいかない。

 オレはニヤけそうになる顔を何とか抑えつつ、黙り込む一同に向けて言葉を続けた。


「それが本当ならば、魔獣の群れはそれよりも巨大だと考えた方がいいだろうな。センピオール蒼林から王都までの距離を考えると、いずれ、ここまで被害が拡大するかもしれない。打つ手を誤れば、王都の周辺にも獣どもが――ぐぐっ」


 失言をさえぎるように、緩くなっていた騎士の押さえ付けがまたも強まる。

 いい加減、鬱陶しくなってきたぞ。


「待て、もう分かったから、圧し掛かるのを止めろ。……王よ、オレから一つ提案がある」


 そう言って、オレはくど過ぎる騎士の行動に対する抗議の視線を送った。察した王が、オレを押さえ付けていた騎士に離れるように命令する。


「あぁ、ありがとう」


 数分振りに自由になった体を伸ばしつつ、オレは……王、王女、その臣下どもと姉弟子のメリザンシヤ、そして側でひっそりと立ち尽くす少年に顔を向ける。


「この件はオレに全部任せる、というのはどうだ?」


 その一言によって静まり返った謁見の間の中心で、オレは指で作った輪を見せる。

 無論、魔獣討伐の報酬は金貨で、という意思を込めて。

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