鈴虫が泣く頃に

@tiana0405

魂の記憶

 これは、私の中の魂の記憶である。貴女は、前世という物が存在すると思うだろうか?


魂は、目には見えない。魂は、形がない。死んだらどうなるのだろう?


私達人間は、得体の知れない未知の物を恐れると同時に、強く惹かれる。


きっと、魂に関してもそうだろう。



ある者は、非科学的だと笑い、宗教的な物は信じないと言う。



だが、そんな人々ですら、自らの死に直面してどうしようもなくなった時、神といういるかいないかも定かでない形なき物に縋るのだ。



人は、いつか死ぬ。私も貴女も、いずれ必ず死ぬ。しかし、私の中には永遠の思い出が残るだろう。私の体は朽ちても、私の心が、決して腐り落ちる事はない。心は、見えない。心は、形がない。元々、触れもしない物なのに、何故か皆、心が存在していると分かっているのは不思議だね。



そして、私の体が動かなくなった時、私の魂はゆっくりと体から抜け出る。その際に、名残惜しそうにしながらも、魂はその人生で培った私の心を愛おしそうに抱いて、新たな旅路に出て行くのだ。



時に、私は、今生で経験のした事のない感覚を、まるでもう体験したかのように感じる事がある。



初めて会った人に対して、会った事のあるような気がしたり、そう言った類いの経験さ。


きっとそれは、私の魂が、数々の前世で経験した心をしっかりと忘れずに記憶しているのだろう。



 私は、貴方が私を心配そうに見つめて、私の手を握った時、今までに感じた事のない暖かさを感じると同時に、泣き出したい位の懐かしさを覚えたのだ。




そう、これは、私と貴女の物語。私の魂の記憶の一つに他ならない。













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