熱血番長 熱 血男

クソムシ.mp3

カオスユニバース

ここは、私立お嬢様学園。各界重鎮の息女が集まるお嬢様学校である。生徒たちは互いに姉妹のように慈しみ合い、外の世界から隔てられて暮らしている。とされている。だが、それは表向きのセールスコピー。その実態は超格差社会。富、名声、力。この世の全てで冷酷なランク付けがされる超絶閉鎖地獄学園なのだ。

「死なない豚はただのカス。いい加減お亡くなりになってくださる?」

「……Ó⁠╭⁠╮⁠Ò(嫌よ)」

しーね、しーねと体育館裏に響き渡るシュプレヒコールは興奮に震えていた。何を隠そうこれこそが、私立お嬢様学園名物平民殺しである。特待枠の美味しい話につられてきた阿呆な庶民をなぶって殺す。開校より続く伝統だ。当然、その死は徹底的に隠蔽される。ダイヤの破片、ランボルギーニのタイヤ痕。証拠は明らかでありながら、すべては不慮の事故となるのだ。

そしてこの惨状を作り上げた首魁こそ、この女。今代の生徒女帝、汚条サマーなのだ。

「今年の特待60人の中で生き残ったのは豚一匹。絶望して舌でも噛み切るかと思えば歯向かう始末。せっかくお仲良しさんグループで取ってもらいましたのに、面白くもなかったですし。外れですわね〜本当。」

げしげしと、いらだちを込めて優雅に少女を蹴り続ける。少女はボロ切れのようになりながらもまだ目は死んでいなかった。だが。

「これは何か知っていて?まあ庶民は知らないでしょうし教えて差し上げますわ。おフランス製の処刑器具、もっとも慈悲深い刃。おギロチンですわ〜!」

じゃーん、とお披露目されたギロチンにわーっと喜ぶお嬢様の群れ。そして今にも少女は引っ立てられ、ギロチンにかけられようとしていた。そこに!

「待ちな!」

鋭い少年の声がした。

お嬢様たちは一斉に声の元へ振り向いた。そこには、破れた学帽、煤けた学ランに下駄。まさしく番長の格好をした少年がいた。

「ここは女子校ですわよ!?」「なんて汚らわしい……」「あっ……でもああいうのもいいかも……♡」ざわざわとしたお嬢様たちのどよめきは、少年の声にかき消された。

「オイ、女よってたかってボコすたぁてめえ等にプライドはねぇのか?」

ガチギレである。これにはさすがのお嬢様たちも恐怖!しかし。裏総理大臣の娘たる汚条はひるまなかった。

「へっ、へぇ、汚条さま、豚が増えましたぜ。」

「どうしようでやんすかね?」

「ちょうどいいですわ、やっておしまい!」

「「アイアイサー!」」

応えるやいなや汚条の横に控えていた双子の少女たちが飛びかかる!手にはかぎ爪、完璧なクロス。

「「必殺!サザンクロス!」」

だが、かぎ爪は両の手のひらでしっかと受け止められてしまった。

「かぁ〜っ。これだからお嬢ちゃんはいけねえや。かぎ爪なんて、トーシロに使えっかよ」

「ふ、ふん。じゃあ何を使うんでやんすか?」

「これよ」

ぶんっと腕を振るい、双子を跳ね飛ばして💪のポーズを取ってみせる。双子は衝撃で「バタンキュー」と戦線離脱!

「使えないですわ。わたくし自ら叩くとしますわ。」

その言葉で空気が変わった。ザッ!と全校生徒が逃げ去った。そして体育館裏はタイマン場と化した。

「先手必勝!お嬢サマシンガン!」

説明しよう!お嬢サマシンガンとは、お嬢さまパワーをこめたマシンガン乱射である!秒間200発×2!二丁乱射だぁ!

「ふん、ぬぉっ!」

だが、それを気合で耐える少年。何なら少し余裕もありそうだ。

「ふん……自己紹介をしよう……オイラは……熱血男(ねつ けつお)。番長だ。」

ズババババと鳴り響く銃声の中、自己紹介をして精神的マウントを取ろうと試みる。だが。

「平民に名乗る名などありませんわ!」

通じない。平民のことなどキーキー喚く猿にしか思っていないのだ!言葉が通じない!

「くっ」

こうなってくるとアウトレンジから一方的殺戮である。気合いもいつまで持つかはわからない。だが。

「うおおおおおおおおおおっ!」

超特急で突っ込む!当然被弾数が増えるが構わない!掴みかかって近接に持ち込む!

「お嬢サマジック」

だが。それは幻影だった。本体はさらに遠くへ!いつまで経っても追いつけない!一方的に撃たれ放題だ!まずいぞ!

一方、その頃。お嬢様たちはドローンカメラでライブ中継して見守っていた。そして驚愕する。けつおの強さに。汚条は、生徒女帝の座を暴力で奪い取った女。お嬢サマシンガン、お嬢サマジックのコンボは未だ誰も耐えられなかった。だが、どうだ。気合まかせでも、結構耐えてる。当然何者か気になる。

「まさか」

「知っているのですか!?地所さん!」

新聞部部長、地所引子は静かに語った。あらゆる学園に出没しては混沌を引き起こして去っていく、最強の辻番長のウワサを。いわく、戦闘機とタイマンはって撃墜した。いわく、雨の日に猫を一万匹拾った。などなど番長力溢れる伝説の数々。……数えればキリのない、与太話。しかし現に戦う姿をみれば納得せざるを得なかった。それでも、彼女たちは確信していた。私たちの女帝が勝つ、と。

「ぐっ……」

「そういえば、近接に持ち込めば勝機があると思い上がっていましたわね。」

そう言うと、汚条はぽいっと何の気なしにマシンガンを捨ててしまう。

「かかってきなさい。」

「舐めやがって……!」

血男は凄まじい勢いでタックルをぶちかました。だが。

「お馬鹿さんですわ。お嬢様が近接弱いと思って?わたくし格闘技も嗜んでいましてよ。」

お嬢サマーシャルアーツ!48の殺人技が血男を襲う!!

「ぐわーっ!!!」

強い!強すぎる!血男はもはや虫の息。そんな彼にいじめられていた少女……披露院ねねこは尋ねる。

「(・・?(なぜ助けるの?)」

「それは……俺が……番長だからだ!気に入らねえやつはぶっ飛ばし、手前ぇの正義と仁義を通す、それが番長ってモンよ!」

「野蛮ですわ〜。権力に屈しなさい、豚」

「うおおおおおおおおおおおおおお、命を、燃やせぇぇええええ!」

凄まじい速度!汚嬢もさすがに反応できない!

「首もとばせぇええええええ!」

ばびょーん!首が飛びました。ぶしゃーっと血が噴き出すとどこからともなく聞こえてくるよ。

『今週の、ドキドキぴかぴか占い〜!』

『気になるあのコに鉄☆拳☆制☆裁』

『来週もまた見るんだっちゃよーん!』

「うおおおおおおおおおお!鉄拳制裁鉄拳制裁鉄拳制裁鉄拳制裁!」

こうしてお嬢様軍団は壊滅した。グーパンで。

「ふっ、さらばだ」

「待って!わたしも、ついて行っていいかしら……死体だらけの学校に、乙女をおいていくつもり?」

「はっ!お前、名前は?」

「披露院ねねこ。」

これが、日本の高校を荒らして回った伝説の族、混沌銀河(カオスユニバース)の始まりであった。

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