02 山賊と置き土産

 夜が明けた。


 ルルと勇者の青年は、山の中を歩いている。


 手を引かれるそのまなざしはくもったままだ。


 しばらく歩いていると、向こうからたくさんの男たちが、のっしのっしとこちらへやってくる。


「おい、そこの二人」


 一番先頭に立っていたヒゲづらが、野太い声でうなった。


「なあに、おじさん?」


 ルルはおそれることもなく、ニコニコとしながら返した。


「身ぐるみをはいでやる。俺たちは山賊だ。逆らったら容赦はしないぞ?」


 ルルはペロリとくちびるをなめた。


「ふうん、そうなんだ」


「ほら、とっととその荷物、ここへ置いていきな。さもないと、命はないぞ?」


 山賊の頭領は吠えたが、ルルの瞳を見た途端、頭がからっぽになった。


「ねえ、おじさん、こういうのはどう?」


 語りかけるルルに対し、山賊一味はボケッとしている。


 彼はとなりにいる青年の肩に手をかけた。


「この方は勇者さまなんだ。おじさんたちにあげるから、僕と荷物のことは見逃してよ、ね?」


 ルルを除くの全員のまなざしはくもっていた。


「……はい」


 頭領の口が人形のように動いた。


「じゃ、勇者さま、そういうことで。短い間だったけど、楽しかったよ。ありがとうね?」


「……はい」


 勇者の口も同様に動いた。


 ルルは勇者の荷物を背中に担ぐと、彼の携えていた剣をわきに差し、山を下っていった。


 勇者と山賊がその後どうなったのかは、誰も知らない。

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