間話 着々と世界は回る
第七代『魔神』トビアス・イレル 直立したまま目を覚まし、額に謎の紋章のある彼は早朝、周りを見渡す。
鴉が急いで飛び立とうとし、鳥なのに珍しく転ける。
そして彼の周囲はいつの間にか朱に染まっている。
「…巡りが悪いな。…ここまでとは初めてか」
彼は転がる頭をどかしつつ、なにかの建物の表に出る。
外から入ってきた人族の兵士が何か叫んでいる。が、そんな矮小な出来事に『魔神』は関心しない。
兵士は魔神の体を槍で貫こうとするが、逆に槍は兵士の方に突き刺さり、そのまま絶命した。
「また揺らぎ始めたか」
また増えた朱色は、彼を旭色に彩っていた。
彼は自分の見た景色を頼りに、狂う計算をふたたび修正する。
その間にも、彼を覆う朱は増えていくのだった。
▼ ▼ ▼ ▼ ▼
『神将』アルヴァリー 右目に眼帯をした彼は、夕日で赤色に染まった、この世界で一番高い霊山、
そして眼帯を外し、七色に彩られた目をむき出して、北の方角、そして西の方角を向き、何かを確認すると、また峰を下っていく。
下る途中、緑龍に出くわすが難なく肉片とし、先に進む。
取り敢えずは西に。
彼はこの世界で唯一、起こった
「…どちらだ」
彼は自分の感覚を頼りに、確固たる覚悟でそこに向かう。
彼の剣は、怒りに震えていた。
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どこかにある地下帝国。そこに『太妖王』マニスは君臨している。
彼女の僅かな感覚は、海から運んでくる潮の風とともに、何かを捉えていた。
「…ふむ」
彼女は席を立ち、窓の外を覗く。
「どうやら起こりそうね、ダーリン」
ロマンスと情熱に支配された彼女の頭の中にいるまだ見たこともないしいるかどうかすらもわからない完璧なイマジナリーなボーイに、彼女は語りかける。
「なにをしておいでで?マニス様」
最側近の一人七常侍の七。『傲慢』のエラウェルだ。
一見端正な顔つきだが、彼の本当の素顔を知るものは『太妖王』のみ。
奇怪な生物である。
「何か…揺らいでいるわね。歪が溜まっているわ」
「歪…ですか」
「世界が鬱憤を溜めているのよ」
「そうなんですね」
「…」
「ところでなんだけど、貴方ディナーの予定は空いてる?」
「!も、もちろんですとも!」
「やっぱいいわ、価値を見出だせない」
「…」
彼女は少し、熱を帯びた顔を歪ませた。
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枯れ草で構成された草原地帯、通称サバンナと呼ばれるこの一帯に一本続く、小さな血の道。
耳も目も尻尾もない、ただ赤のネズミのような姿をした何かは、ゆっくりと胎動しながら走る。
飛び跳ね、そのネズミを狙う猫ににた生物の首は取れ、草はお辞儀をして飛び、そのネズミのような何かが通る道を作る。
そのネズミが、一瞬立ち止まり、何かを嗅ぎ取る。
世界の裂ける音。はたまた、時空か。
痛みにおののくネズミは、着実に”場所”に向かっていた。
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「妾の勝ちじゃ!」
「なんと!この俺が負けた、だと…」
チェスで遊ぶ二人。
『
アガサスはカールした羊の角を持ち、コウモリのような羽を持つ。見るものによって年齢が変わるように見えるが、一般的には幼女の分類になる。因みに5000歳以上である。
ゴネルは、緑と赤の目、所謂魔眼を所有している。見たものに呪を掛け、ナーフ技やバフ技を掛けたり、透視ができたり、千里が見えたりするこの、『魔眼』。
それを生まれつき二つ持つゴネル。
普通はランダムなのだが、ゴネルは生まれてすぐ死ぬリセマラによって二つ手に入れたのだ。
不死身の特権である。
「いや、チェスにしては単純過ぎるでしょ…」
観戦者は、第六十八代『
そこに現れたのは、真ん中だけポッカリ空き、王が取られたあまりにもお粗末な盤面である。
「うるさいのう!お前が参加するとつまんなくなるんじゃ!あっち行っとけ!」
「そう!つまらん!シッシッ!」
それを聞いて魔王と滅帝はキレる。
「はいはい。お好きにどうぞ」
ファルカスはもう呆れてどっかに行ってしまった。
「む」
宮殿のバルコニーに立ったファルカスは目を閉じる。
彼の第六感が何かを感じ取ったのだ。
「魔気の…揺らぎ?なんだこれは…ちょっと!お二人!こっち来てくださ…ってなにしてんねん…」
部屋の中では先程の二人が取っ組み合っている。
「それは妾の八つ時じゃ!」
「違いまーす!俺のドーナツでーす!」
「2人分あるやろちゃんと見ろ!そして分け合って食え!」
こちらは出発まで少し時間がかかりそうだ。
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第五十一代『勝妖王』、マーカス・セリコソロ。
南国に住む彼もまた、何かを感じ取った。
どでかい宮殿、『大要塞ベテルギウス』
そこに住む勝妖王マーカス。
「これ、近衛兵団をここに」
「ハッ」
部下に指示し、彼もまた壇上に登る。
数百年ぶりに、また勝妖王が歴史の表舞台に登場するのである。
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